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凍 - 沢木耕太郎

山登り


図書館で予約したものの、待てど暮らせど順番にならないのでしびれを切らして本屋で立ち読みしてしまった。

クライマー山野井泰史さんと山野井妙子さんのギャチュンカン北壁の登攀を見事に描き出した本。登攀の描写と前後して彼ら二人のクライマーとしての自由奔放な生活にもページが割かれている。

以前読んだ「単独登攀者」で山野井さんの山にかける執念と、そのストイックな生活態度はよく分かっていたつもりなのだけれど、奥さんの妙子さんも合わせて、とにかく心の底から山が好きで、本当に強い人たちなのだな、と思った。
無理を承知でアタックをかけて、本当に体ひとつで8,000m級の山と対峙しながら集中してクライミングをやっている自分に感動する・・・というくだりは本当にスポーツ馬鹿なんだな、と心底思う。

自分もテニスやらサッカーやらで一糸の乱れもないような心境になって、それを心の底から楽しむことができるのだけど、クライミングでその境地に達したことはない。頼れる仲間がいて、楽しく登ることができるのは本当に素晴らしいのだけれど、ああいった陶酔しているかのような境地に至るにはもっと自分の持っている全てを投げ出して登らなければいけないのだろうなぁと思う。

「死のクレバス」で生還したJ.シンプソンにも通じるのだけれど、二人があの状況から帰ってくることができたのは、常に自分を信じて行動することができていたからだと思う。
その意味で、彼らは一般的な意味での「遭難」はしていないのだろうと思う。「甘え」は「無駄」を生むし、「自信」をなくしたら人は遭難してしまうのだ。