« エーゲ・永遠回帰の海 - 立花隆 | メイン | 郵便局と蛇 - A.E. コッパード »

川島雄三 乱調の美学 - 川島雄三

文化・芸術


川島入門によい、という評価だったので入手してみた。

彼の作品に携わった人たちによって語られる川島監督は、とてもヤンチャで不良で、弱くて普通な人間として浮かび上がってくる。
酔っぱらった時に絡んで、周りの人に辛辣な言葉を投げたりする彼はとても生身で弱いけど、現場の人たちを信頼して、自分が間違っていればきちんと自分を捨てることができた彼は「映画を作ること」に対してとても真摯な態度を貫いた人だったのだな、と思う。

健康に生きている我々はたまにしか「死」を感じる機会がないけれど、体の不自由さと呪われた血のもとに生まれた彼にとって死は本当に身近なものだったのではないだろうか?恐らく、幼いときに母を亡くしたり、慕っていた姉をなくしたりしたショックが彼の原体験としてあり、人生を通して日常的な「死」が彼を突き動かしていたのではないか?と想像する。

自分の中ではひとつの映画を作るのはとてつもなく大変な作業のような印象があるのだけれど、本の中の人たちはそれをいとも簡単な作業のように言っているのが自分にとっては驚きだった。