中立国の戦い - 飯山 幸伸
ノンフィクション
中立国の「戦い」の歴史。
現代においても代表的な中立国であるスイスやスウェーデンがどのような経緯で中立を宣言し、それが2度の世界大戦をどのようにくぐり抜けてきたかが綴られている。
ドイツ、オーストリア、イタリア、そしてフランスに囲まれたヨーロッパの大動脈スイス。彼らの中立の歴史が13世紀のハプスブルグ家やブルボン家との対立の狭間にいたことによるものであったことを初めて知った。
ナチス・ドイツとの直接的な交戦はなかったものの、極めて危ない橋を渡りながら中立を続けたスイスの苦労は途方もないものであったに違いない。
これはスウェーデンに関しても同じで、様々な事情により完全な中立体制を崩さねばならなくなってしまった同国が、第2次大戦後に有力な軍事産業を生み出すことに成功したのは必然とも言えるのであろう。SAAB社が実はドイツ人の手によって作られた会社であったことを初めて知った。
これら以外の中立国に関しても多少触れられているが、「中立国」という存在が国際関係の中でいかに難しいものか、ということがとてもよく分かった。
こういった感覚で現代の日本を見ると、あまりにも無邪気に「戦争を放棄」と言ってしまっているように感じる。別に「軍備に努めよ」とか言うつもりはないけれど、国際関係というものが歴史的に戦争と経済のパワーバランスで成り立ってきたことをきちんと認識した上できちんとした国策・外交に努めるべきであろう、と強く思った。