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庶民の発見 - 宮本常一

その他


貧しいながらも多くのものに囲まれて生活していた日本の「田舎の」民に関する本。

嫁・婿のシステムや、一家が生き残っていくための知恵、出稼ぎや村の政治、教育や伝承まで、今でも多くの日本人に見られる行動体系に直結した昔の生活が描かれている。

「かつて西日本の念仏宗のおこなわれている村々では、夕飯がすむと木魚をたたいて念仏申す声が家々からながれでていたものである。それが一つのリズムをつくって、ある平和を思わせた。・・・・。ところが、いまはどの家からもラジオの声がながれでている。そして、それはどの家もどの家もみんな同じものなのである。家々がうみだす声ではなく、中央からの単一の声である。」

「農民たちは、それぞれの与えられた環境の中で生き、それをあたりまえと思い、大きい疑問ももたなかった。しかし周囲との比較がおこってくると、疑問もわき、また自分たちの生活がこのままでよいかどうかの検討もおこってくると、疑問もわき、また自分たちの生活がこのままでよいかどうかの検討もおこってくる。そうした場合に大切なのは、まず自分たちの力を正しく知ることであった。それには、比較と実験に待つことが、まず大切大切であった。旅が尊ばれたのもそのためであり、経験の尊ばれたのもそのためである。」

「村の中のすぐれた知識をもっていた者が、その知恵を発揮したために、かえって将来をおそれられて殺されたという話は、かつてよくきいたところであった。」

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日本人の土地へのこだわり(=土への愛情)は、農民的な感情が強いのかなぁ、と思った。我々はエンジニア的姿勢で土と接してきた農民の子孫なのだ。