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陶淵明全集 - 陶淵明

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東晋・宋に生きた詩人、陶淵明の全作品を収録した文庫本。
川島雄三監督が好きだった、という雑詩(下巻に収録)に興味があったので、当時の中国人気風と漢詩に慣れたくて一通り読んでみた。

陶淵明はちょっとした苦労人で、彼の詩にはいつも「酒がない」だとかそんな残念な感慨に満ちているのだけれど、「一発何かやってやる」みたいな張り切りがなくって、ただ「心地よく生きよう」みたいに諦めているところがあるのがとてもすがすがしい。
中国人らしくなく(と言っては失礼だけれど)とても人間的な人で、我が子を思う心や自然を愛する心がとてもダイレクトに伝わってくる。

20代後半から官史として仕えるものの、縁故のない淵明にはろくな仕事がまわってこない。とはいえ、仕事がなければ生活がなりたたないので、そのままフラフラと仕官生活と隠遁生活を積み重ねた挙げ句の41歳、ついに彼は決心して故郷の田舎で自由気ままな生活を始めることを決意するのだ。