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体は全部知っている - 吉本ばなな

小説・詩集


瑞牆山と金峰山の山行に持っていく本を悩んだ挙げ句、まだ読んだことがなくてそこまで重くなさそうなこの本を持っていくことにした。

「キッチン」や「アムリタ」はとても好きで、彼女の流れ行く毎日から紡ぎ出される「何か」を表現する力にいつも驚かされる。
どうしてこの本を買ったのか忘れてしまったけれど、ウェブで誰かが勧めていたとかそんな理由だったと思う。

この本に収められているのはどれも短編小説で、性格や環境の異なる主人公(女性)の視点から小さな物語が語られる。
前々から、優れた小説家(あるいは歴史家)に必要なのは「鋭い洞察力」だと思っているのだけれど、吉本ばななさんの文章には優れた洞察力と観察力がしっとりと優しいオブラートに包まれて、そこに置いてあるかのような、そんな感覚を受ける。
女性的な強さや弱さ、それに人生の面白さ・・・。そんなものがひっそりと置かれているのだ。

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結局、山に持っていく本としてこの本を選んだこと自体はよかったのだけれど、1人でのテント泊山行にはもっと分厚い本を持っていってもよいかもしれない、と思った。
眠りにうまくつけない夜や、早く起きすぎてしまった朝なんかにヘッドランプで読む文章もなかなか味があってよいものだ。