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草原の記 - 司馬遼太郎

地学・環境学


モンゴルに関する司馬遼太郎的考察。

世界地図を広げたときに、モンゴルと呼ばれる広大な草原は圧倒的に場所の特異さには誰もが驚かされる。
そしてユーラシア大陸の広さをものともせずに、東から西へと移動を続けながら生活を営んでいる人たちの姿はそれ異常に感動的だ。
農耕民族である漢民族や日本列島の住民とは、個々人が内に持っているメンタリティーが根本的に異なるような気がしてならない。

町に住みながらもあくまで草原を愛したり、ユーラシア大陸をまたにかける大侵略を行ったと思えばあっけなくその領土を失ってしまったり、とにかくこの人達は素朴なのだ。
そしてその素朴さゆえに近代において近隣の巨大国家間の軋轢の間に苦しい思いをしつづける運命を背負ってしまっているのだけれど、そんなことさえも気にせず馬の背にまたがって草原をを行くこの人たちのなんて気分のよいことか。

みずみずしい想像力と描写力に溢れた素晴らしい本。