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2005年09月09日

草原の記 - 司馬遼太郎


モンゴルに関する司馬遼太郎的考察。

世界地図を広げたときに、モンゴルと呼ばれる広大な草原は圧倒的に場所の特異さには誰もが驚かされる。
そしてユーラシア大陸の広さをものともせずに、東から西へと移動を続けながら生活を営んでいる人たちの姿はそれ異常に感動的だ。
農耕民族である漢民族や日本列島の住民とは、個々人が内に持っているメンタリティーが根本的に異なるような気がしてならない。

町に住みながらもあくまで草原を愛したり、ユーラシア大陸をまたにかける大侵略を行ったと思えばあっけなくその領土を失ってしまったり、とにかくこの人達は素朴なのだ。
そしてその素朴さゆえに近代において近隣の巨大国家間の軋轢の間に苦しい思いをしつづける運命を背負ってしまっているのだけれど、そんなことさえも気にせず馬の背にまたがって草原をを行くこの人たちのなんて気分のよいことか。

みずみずしい想像力と描写力に溢れた素晴らしい本。

2005年09月05日

影の現象学 - 河合隼雄


よい本。
ボリュームも内容も豊かで、急いで読むには惜しかったのでゆっくとり読んだ。

2,3年前からずぅ~~っと考え続けていた「人はみな、それぞれの地獄を抱えている」というテーゼの「地獄」こそは河合隼雄の言う「影」でありのだな、と感じた。

人がみな抱えている「影」に関する考察を前面に押し出しつつも、それに関連する興味深い事柄が沢山出てくる。
永遠の少年の限界に対する話もとても興味深かったし、道化から老王への変化の話、そして何よりも影の恐ろしさとその必然性のジレンマ・・・。
河合隼雄さんの本は他に沢山読んだけれど、色んなものがごった煮にされていてこれだけの完成度を誇っている本は他にない気がする。そういう意味で、この本は名著と呼ぶに値する本なのだろう。

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この本に出てきて気になったものについてメモ:

ホフマン「大晦日の夜の冒険」
エリ・ヴィーゼル「夜」
マーク・トウェイン「不思議な少年」

音楽 - 小澤 征爾, 武満 徹


とてもリラックスした、音楽家であり友人である二人の会話を聞いているような対談。

「音楽に飢えていたから音楽をやった」
「音楽は結局、音に対するいとおしみであり、愛である」

みたいな言葉がぽこぽこと出てきて、とにかく濃い意見のぶつかり合いなので楽しみながら読むことができる。

武満さんの音楽は図書館で借りたものをリッピンぐしてあるけどまだちゃんと聴いていない。
この対談の印象が残っているうちにじっくりと聞いておこうと思った。