英仏百年戦争 - 佐藤賢一
歴史・考古学
とても面白い視点を提供してくれる本。
イギリスがヘイスティングスの闘いで征服王ウィリアムに敗れ、それ以来彼の直系の子孫による王家によって支配されてきた・・・、という事実を見つめ直すことで、当時にはまだ発達していなかったナショナリズムの原型が百年戦争によって構成されていった点を指摘している。
ノルマンディーの一豪族でしかなかったウィリアムに「征服」された、ということは、確かに当時のイギリスはフランス貴族の「一領土」に過ぎなかった訳で、その後の歴史のいたずらがウィリアムのアンジュー家をイギリスだけを領土として持つ事実上の「イギリス王」にしてしまった・・・、というのは確かに説得力のある説明。
それにしても当時のドロドロとした「戦争」の形や、「家」の勃興やら没落やらは本当にシェイクスピア的世界そのまま。劇にするには一番よい題材だと思った。