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ナグ・ハマディ写本 - エレーヌ・ペイゲルス

宗教・人類学


これはよい本。
ちょっと取っつきにくいけど、キリスト死後に正統派教会が成立していく過程がよく分かる。
グノーシス主義に関してはユングやら何やらでよく耳にはしていたのだけれど、ここまで間近に迫ったのは初めて。

1940年代、エジプトのナグ・ハマディで偶然発見されたパピルス群(これがナグ・ハマディ写本)に書かれていた「抹殺された思想」を軸に、キリスト教成立当時の正統と異端の対立が描かれている。

グノーシス主義はキリスト以前から存在する思想で、キリストの教えの捉え方として「グノーシス主義的」理解があり、それがキリスト教の教えを熱心に広めようと活動していた正統派との摩擦を起こしていた・・・、という感じ。
グノーシスとは知識・認識の意味で、深い自己との対話の中で真理に到達するのが究極目標とされる。

自己認識の究極の形としての神認識、なんてまさにインド思想のアートマンとブラーフマンなんだけど、こういう考え方でキリストを理解していくと全然違った印象をキリスト教に持つことができる。
というか、現代に伝わっている「キリスト教」、及び聖書とはあまりにもかけ離れていて、キリスト教とは呼べないのかもしれない。
音楽でも何でも、横に広げるには分かりやすい方がよいのだ。