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2005年07月30日

アースダイバー - 中沢新一


久しぶりの中沢新一の本。

これは本屋さんで見かけて買わずにはいられなかったものだけど、中沢新一の本としてはとても分かりやすいし、東京という身近な都市にこれまで絶対に考えられていなかった方法で密接に迫っているのでグイグイと吸い込まれてしまった。

とにかく東京、というか都市というものに関する新しい考え方を与えてくれた画期的な本。
感想が多すぎて書けないけどとにかくよかった。

2005年07月27日

ムーミン谷の仲間たち - トーベ・ヤンソン


本で初めて読んだ「ムーミン」。

同じ学校の卒業であることを初めて知った岸田今日子さんがムーミンの声をやっていて、原作の面白さをどこかで語っていたので読みたくなったので読んでみた。

比較的古いほうかな・・・、と思っていたら、この本はムーミンシリーズでは新しい方に属するらしい。
「ムーミン谷の彗星」、「たのしいムーミン一家」あたりが一番古いものらしいので、機会があったら読むことにしよう。

登場人物が人間のそれぞれ持っている個性を強調したような性格を持っていて、彼らが織りなすわざとらしさのない流れていくような日常がとてもよい。
ニョロニョロの怪しさやスナフキンの生活思想、それにムーミン一家のおとぼけぶりがとにかく最高。

2005年07月24日

ローマ人の物語 2 : ローマは一日にして成らず [下] - 塩野七生


ずぅ~~っと前に1巻を勝って「しめしめ、これでいつでも思い出したときに続きを読めるぜ」と思っていたのだけど、読むタイミングを逃し続けたきた本。

羽田の本屋にプラっと寄ったらあったので、屋久島への行き帰りにサクっと読んでしまった。
相変わらず面白い。

ローマの強さの秘密はやはりのそのオープンな姿勢にある、と著者は言おうとしているように感じられた。

2005年07月18日

ルバイヤート - オマル・ハイヤーム


“ルバイヤート”とはペルシャ語で4行詩の意味。
11世紀に生きた賢者、オマル・ハイヤームが友達のために書いたものらしいのだけど、これが相当イイ。

人生の無常を謳いながらも脱宗教していて、それでいて全体的にポジティブな受け止め方をしているところが特徴的。
古代ギリシャ文明と相対するように栄え、脈々と受け継がれてきたペルシャ文化がイスラムの熱狂に蝕まれた時代の人なので、とても洗練された感受性を持っているように思われる。

ヨーロッパに数学や学問的姿勢を持ち込んだのはイスラム文化だと理解されているけれど、まさにそのギリシャ的学問への回帰が行われていた時代なので、思想史で言ってみれば近代へと続く扉に手をかけた人として理解することもできる。

2005年07月09日

ナグ・ハマディ写本 - エレーヌ・ペイゲルス


これはよい本。
ちょっと取っつきにくいけど、キリスト死後に正統派教会が成立していく過程がよく分かる。
グノーシス主義に関してはユングやら何やらでよく耳にはしていたのだけれど、ここまで間近に迫ったのは初めて。

1940年代、エジプトのナグ・ハマディで偶然発見されたパピルス群(これがナグ・ハマディ写本)に書かれていた「抹殺された思想」を軸に、キリスト教成立当時の正統と異端の対立が描かれている。

グノーシス主義はキリスト以前から存在する思想で、キリストの教えの捉え方として「グノーシス主義的」理解があり、それがキリスト教の教えを熱心に広めようと活動していた正統派との摩擦を起こしていた・・・、という感じ。
グノーシスとは知識・認識の意味で、深い自己との対話の中で真理に到達するのが究極目標とされる。

自己認識の究極の形としての神認識、なんてまさにインド思想のアートマンとブラーフマンなんだけど、こういう考え方でキリストを理解していくと全然違った印象をキリスト教に持つことができる。
というか、現代に伝わっている「キリスト教」、及び聖書とはあまりにもかけ離れていて、キリスト教とは呼べないのかもしれない。
音楽でも何でも、横に広げるには分かりやすい方がよいのだ。

2005年07月03日

禅とは何か - 鈴木大拙


ディープな禅入門。

宗教一般に対する解釈も沢山与えてくれるとてもよい本。
理論をこねくりまわしているようにしか見えない部分があるように感じてしまうのは、まだまだ禅に親しんでいないからなのかもしれない。
全体的に禅的なコントラディクションが溢れているのだけれど、なんとなくうなずかせてしまうものがあるのはやっぱり著者が卓越した人物であることを感じさせる。

「知は目であり、情は足である」というのはとても共感。
宗教が「自己の発見」のステップである、という認識にも共感。

小乗仏教と大乗仏教のノリの違いも分かったし、とてもよい本に出会えたと思った。

2005年07月01日

零の発見 - 吉田洋一


「司馬遼太郎のかたち」に載っていた司馬遼太郎の手紙に書かれていたので読んでみた。

本の題名である「零の発見」は、エジプトにはじまりギリシャ、インド、それにアラビア、そしてヨーロッパ・・・、と数学の歴史についてとてもよく書かれている。
これはなかなか。

もう一つ収録されている「直線を切る」はちょっとマニアック気味なので数学嫌いな人にはおすすめできない。
訳あって集中できる環境で読めなかったのであまり頭に入っていない・・・。
この部分に関しては時間のあるときにまた改めて読み直したい。

我ながら数学の無邪気な楽しさは知っているけれど、この手の話に関してはからっきしなことがよく分かってしまったよ・・・。