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聖書はどこから来たか - 久保田展弘

宗教・人類学


副題に「東洋からの思索」とある通り、日本の山岳信仰に親しんできた著者が実際にシナイ半島に行き、一神教が生まれたバックグラウンドに思いをはせる・・・、というノリの本。

全体的に感じるのは、当然だけど著者とキリスト教・ユダヤ教の距離。
我ながら、子供の頃から教会的空気の中で育ったので、マリア様がどうこうして・・・、なんて話は耳にたこができるほど聞いている。
普通の環境で育った日本の人にとって著者のような視点は当然なものなのだろうけれど、少なくとも僕にとっては不自然に感じた。

創世記から列王記伝、それにイザヤ書、そして新訳聖書・・・、と聖書の舞台を歩きながら著者が感じたあれやこれやを書いていて、面白いところは面白い。

たしかに、亜熱帯である日本と、ステップないしはサバンナであるシナイ半島を同列に語ることはできない。
また、複数の民俗がそれぞれ強力な武力とアイデンティティーを持って存在していた場所・・・となれば、全く違った考え方が生まれてくるのは当然とも言えると思う。

それでも、全ての宗教に共通な自然への畏怖と感謝、そしてその他にの細々したところでも共通項は多いのが興味深い。

ちょっと冗長的なところがあるけれど、著者と同じように色々と考えさせられる、という点ではとてもよい本だと思った。