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2005年02月26日

Withnail and I (BFI Modern Classics) - Kevin Jackson


Title: Withnail & I (Bfi Modern Classics)
Author: Kevin Jackson
Price: ¥ 1,559
Publisher: British Film Inst
Published Date:

サンフランシスコへの出張の際に、ユニオンスクエアにあるボーダーズで買ったもの。

Withnail and I の物語のプロットを描き出していくのと同時に、興味深い点や劇場公開時の反響など、リアルタイムで経験していなかった人にとってはありがたい情報が盛りだくさん。

ロビンソンの生い立ちや、彼がこの映画の脚本を書き始めることになった経緯は涙なしには読めないし、映画を作っていく最中で体験した苦労や楽しみはとてもリアリティーがある。
この映画を好きになってからずっと思っていたのだけど、やっぱりこの映画はロビンソンにとってどうしても作りたかった映画なのだろうな、と思う。
つまり、それだけ色んなものをなげうってまで作る価値があったのだろうし、それだからこそ今もってしてこの映画が沢山の若者の共感を得ることができているのだろう、とも思った。

内容に比して値段が高いような気もするけれど、映画が好きなら黙って買って読むべき。

Withnail and I (BFI Modern Classics)

ヨーロッパ法史入門 - クヌート.W.ネル


図書館で借りた泣きそうに面白くない本。

古代におけるローマ法。
中世における大陸法やイギリス法。
近代における工業化に伴った形の権利保護法・・・。

もう少し分かりやすく、面白くなるように書いてくれればいいのに、全然ダメ。

「所有」に関するところはまぁまぁ面白かった。

2005年02月25日

がんと人間 - 杉村 隆


図書館ブラついてなんとなく借りてみた本。

ジェネラル・ノウレッジとしてのがんに関する知識を・・・と、読んでみたのだけど、おぼろげに知っていたことがクリアになってくらいで、そんなに得るところはなかったかな。
暴飲暴食や不健康な生活などがいかに体に悪いか、空恐ろしい気持ちでページをめくる読書体験だった。

「細胞分裂を行う生物にとって、“がん”になる危険性は常にある」
「がんとは、特定の細胞のDNAに傷がつき、細胞分裂のストップが効かなくなって起きる機能障害である」
「世間で“発ガン物質”と騒がれているものは、要するに細胞を壊しし、DNAに傷をつける効果を持つもの」
「90年代の時点で、がん患者の5年間生存率は約半分を超えている -> いたずらにガンを怖がる必要はない」

ちょっと間違っているかもしれないけど、こんな感じか?
遺伝子系の本を読んでガンを調べようと思いついたので、遺伝子治療に関する記述がなかったのが少し寂しかった。

2005年02月19日

忘れられた日本人 - 宮本 常一


これははっきり言って素晴らしい。
日本人でありながらこの本を読んでいなかったのは、なんていうかすごい勿体ないことだな、と思えてしまうほど。

昭和の初期に日本各地の農村を歩き、その地の生活の生き証人である老人や女性達からの話をまとめている本。
江戸時代から明治維新、大正、昭和、と移り変わる歴史の中で、たくましく生きてきた生活者としての農民達の活き活きとした声がとてもうまく収められている。

個人的に、ここしばらく「世間」的社会システムの信頼性を疑うようなことばかりを考えていたのだけれど、この本に描かれている「世間」をかいま見て、それもそれで素晴らしいものだな、と感じた。
とはいえ、大都市などで「世間」的社会システムがうまく機能しないことはまた自分の中で強い確信がある。
はやいとこ、シミュレーターを作り始めたいところではあるが・・・。

2005年02月10日

Journey's End - R.C. Sherriff


Title: Journey's End (York Notes)
Author: R. C. Sherriff
Price: ¥ 891
Publisher: Prentice Hall (UK)
Published Date:

サンフランシスコ行きの飛行機から読み始めて、3日後の帰りの飛行機で読み終えた。

映画"Withnail and I"の中で、登場人物のマーウッドが読んでいる本、ということで読んでみたのだけれど、なんともイギリス的でとてもよくできたお話。

第一次大戦中の西部戦線の塹壕が舞台。
学校を卒業して軍隊に入り、前線へとやってきた若者、ラリーは、自分が配属された部隊長が尊敬する学校の先輩であり、また家族ぐるみのつきあいでもあるスタンホープであることを知って喜ぶ。
一方スタンホープは、3年前に軍隊に入って以来、素晴らしいリーダーシップを発揮すると同時にアルコールに蝕まれた生活をしていた・・・・。

とても苦々しい体験が綴られているのだけれど、その中でもイギリス的な精神を失わずにいる兵士達の心情が描かれている。
「自由と規律」の中に出てくる、家庭教師とその教え子の話(元ネタは忘れてしまった)ととても似ている。
やはり第一次大戦の記憶はイギリスにとてもとても大きな影響を与えたのだな、と今更ながら感じた。

2005年02月05日

カフカ短篇集 - フランツ・カフカ


まさに「現代のお伽噺」。

象徴性だとか意味論だとかで考えていくことで何か分かる(または分かった気分になる)こともあるのかもしれないけれど、この小さな芸術品は自分の心のなかでそっと愛でるように楽しむのが一番よいのでは?と思う。
カフカとはチェコ語で「カラス」の意味らしい。

星新一のようなショート・ショートとの違いはどこにあるのか?と言われると、その抽象性にある、としか言いようがない。
「流刑地にて」や「万里の長城」のような長めのものもあるけれど、この本に収録されているほとんどの作品は、思いつきで筆をとってササっと仕上げてしまったような印象を与える。
ある意味、夢で見たような内容を起きてすぐにメモしたような感じ。
その意味で、どの物語もその発想のフレッシュさが目を引く。

誰が近いか、と言われると宮沢賢治かな?

2005年02月02日

情報の東西交渉史 - 山口修


とても読みやすい形で情報交通の歴史がまとまった本。
ちょっとあっさりしすぎかも。

植民地時代の先駆けに、スペインとポルトガルが演じた滑稽とまで言える所有欲がとても面白かった。
「地球の半分、こっちからこっちまでが俺のね~♪」

なんのかんの言っても中国の影響力は常にとてつもなく大きかったのだなぁ、と思った。

現代人の論語 - 呉智英


論語を読みはじめるよい足がかりになってくれた本。

古典的な解釈に対する著者の意見を交えつつ、とても自由な立場から論語を読んでいくことで浮かんでくる孔子像を描いている。

孔子は一番少ない努力で一番効果的なことを表現できる天才だなぁ、と感じた。
あと、頭が良くてかつ世渡り上手なひとはわざわざ苦労してまで大変なことはやらないけれど、人間の原動力として「徳」を求めた孔子はやはり世渡り上手ではなく「人」として難事にあたったのだな、と思う。
真に偉大なことってのは、単純な意味において優れただけの人には成し遂げられないのだろう。

中島敦の「弟子」はやっぱり有名な話なのだな。
また読みたくなった。