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2004年12月29日

外套・鼻 - ゴーゴリ


とてもロシアらしい小説。
ノルシュタインが現在製作中の作品が「外套」である、と聞いたので、読んでみたのだけど、予想以上によかった。

外套は、愛すべき小市民の本当にささやかな生活と、その破綻が描かれている。
どんなにとるに足らない小人物であっても、踏みにじってしまったら簡単に壊れてしまう何かを抱えて生活している。

ディッケンズのクリスマス・キャロル的な心を少し暖められるような小説だった。

「鼻」も面白いけど、個人的には「外套」のが全然好き。

2004年12月24日

ボヴァリー夫人 - フローベル


感情教育が相当面白かったので読んでみた。

・・・まぁ、悪くないかな、という感じ。
感情教育にはなぜかもっと没入できたのだけど、今回はいまいち。

人物の描写や感情の表現はとても面白いのだけど、登場人物を自分の中でうまく投影できなかったのがいけないのかも。
とはいえ、物語としては十分に堪能できたと思う。

2004年12月21日

ヨーロッパの舌はどう変わったか - 南直人


近代ヨーロッパで起こった食の革命を解説した本。
アカデミックな香りが強めだけど、まぁまぁ読みやすい。

ヨーロッパ人の平均身長の推移からはじまり、農業革命、人口の増減、それに植民時代による変移や保存食革命。
テーブルマナーの話も興味深い。
扱っている内容が多岐に渡るのだけど、なかなかよくまとまっている。

要するに、帝国主義によってヨーロッパの津々浦々まで貴族趣味が浸透して、生活レベル全体の底上げが起こったことの一部として理解可能な物事なのだけれど、それにしても19世紀という近い時代にこんなに大きな革命が起きていたことに改めでびっくりした。

図書館で借りたのだけど、やっぱり手元に置いておきたいなぁ・・・。

2004年12月17日

この国のかたち 3 - 司馬遼太郎


こないだ古本屋で偶然見つけたものをサクッと読んでしまった。

毎度のことだけど、ページを繰るごとに勿体ないような気分にさせてくれる本にはそうしょっちゅう巡り会えるものではない、と思う。
農業改革や律令制、武士の話。

今は1,2,3,5が揃っているので、できれば単行本で全部揃えていこうと思う。
次に巡り会えるのはいつだろう・・・。

2004年12月11日

自省録 - マルクス・アウレリアス


躍動感溢れる哲学書であり、人生の教科書。

ストア派の哲学者であり、多忙なローマ帝国の王として生きたアウレリアスが考えたことがみっちりと詰め込まれている。
たとえ人に哲学する事ができたとしても、それを実践するのは相当難しい。
そういう意味で、自分の信念を貫いて生きたアウレリアスは本当の意味での哲学者なのではないか、と思った。

「全てが空しい」的な感覚はどこか仏教的な趣があった。

2004年12月03日

複雑系 - M.ミッチェル ワールドロップ


一部の学者が一時期熱心に提唱していた「複雑系」の考え方をキーマンを通して、紹介している本。

まず、冒頭から登場する経済学者がとてもよかった。
数理経済学の嘘臭さをもっと正面から扱って、もっと「科学」的アプローチを行えないものか・・・、「っていうか今の経済学って全然好きになれな~い」と思ってたので、しょっぱなからぐいぐいと引き込まれた。

あと、秩序とカオスとの狭間で「創発」が起こることをコンピューター・シミュレーションを通して明らかにしていく部分がすごい好きだった。

最後の方はちょっとまったり気味かも。