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長江文明の探求 - 梅原猛・安田喜憲

歴史・考古学


中華文明の源流を長江の中・下流域に求める本。

きれいな写真と稲作社会と森の文明の解説は、ひとりの日本人として自然と興味をそそられる。
最近は重めな本ばかりを読んでいたので、写真を眺めながらでもついつい先を急いで読み進めようとしている自分を落ち着かせながらゆったりとした気分で読んだ。

梅棹忠夫が西洋と東洋の間の存在として「中洋」という概念を見出したように、これまでの世界的な動きを形成してきた「畑作牧畜型」文明に対する「稲作漁撈型」文明を高らかに宣言している。

確かに、文明史観として「砂漠的、人工的」世界観と「森林的、自然的」なものを対比的に捉えることは面白い試みであると思うし、強く共感するところもある。ただしその文明の形態が必然性から来るものではなく、自然環境との緩やかな対話によって長い時間をかけて育まれたものである、という認識は大切だと思う。
つまり、「稲作漁撈型」文明だから自然に対して厳しいことをすることはない・・・といった固定的な観念に固定されてしまうと思わぬ間違った結論を導いてしまう可能性が常にあるのではないだろうか、と感じた。

文中の“私たちは力と闘争で物事を解決する畑作牧畜型の都市文明に、ほとほと疲れ果てた。アメリカとイラクの戦争でいったい何が生まれたのか。そして畑作牧畜型の都市文明は「力と闘争の文明」を生み出し、地球環境の保全、自然と人間の共存、民族と民族の共存、文明と文明の共存の点においても行き詰った・・・”といったあたりに安田氏の本音が現れているのではないだろうか。