パワーメーター狂想曲

5月の中ごろにこっそり某イギリスの通販でオーダーをかけていたQUARQのCinQoなのだけど、2か月経っても入荷する気配がなかったのでひとまずキャンセル。

今年は夏からPowertap体制から脱却して、「練習でもレースでもパワーが見える体制」に移行するつもりでいたのだけど、二世代目のパワーメーター選びは白紙に戻った。

ってわけで、使い始めて1年経ったPowertapホイール君とはまだしばらく仲良く一緒に走ることになりそう。

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2010年7月現在、市場に出ていてまともに使えるパワーメーターは、SRM、CinQo、Powertapの三つ。どれも最新版の製品は無線の標準規格Ant+に対応しているので、対応するコンピューターさえ持っていればパワーメーターだけゲットして利用可能になる。

最も安価で導入の敷居の低いのがPowertapで、動作の安定性、メンテナンス性(ユーザー再度でのバッテリ交換)の面でも優れている反面、ホイール縛りになってしまうのが唯一にして最大の弱点。練習用、レース用で2セット持つとなると、SRM買えよということになりがち。

SRMとCinQoはほとんど同じような方式を用いた製品(CinQoはSRMの切れた特許を使ってるらしい)で、実績のあるSRMに対してコストパフォーマンスで勝負のCinQoという構図。

SRMは「プロ用の機材」という色合いが濃く、細かい注文に対応して作ってくれるマニアックな面がある代わりに、量産効果で値段を安くしようという気はなさそう。バッテリーの交換は基本的に工場(ドイツ)送りだけど、その際にしっかりキャリブレーションをやってくれたりするみたいなので、サポート体制は充実してる。やろうと思えば自分でバッテリーの交換やキャリブレーションも可能。

対するCinQoは、バッテリー交換がユーザーの手元で(比較的簡単に)できてSRMよりも安いので、「貧乏人のためのSRM」的なポジションで着実に地歩を固めつつある印象。ただし、供給が不安定気味で、安いとは言っても普通の人から見たら十二分に高価で、しかも日本からだと本家からは送ってくれない(誰かに中継してもらうか、他の通販からしか買えない)といったあたりがネック。キャリブレーションに関しては、下にまとめた通りユーザーの手元でもできそうな雰囲気なので、懸念点はほとんどないといってよさそう。

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で、キャリブレーション問題。

パワーメーターのキャリブレーションには二つのパラメーターがあって、トルクのかかってない状態の「ゼロオフセット」と、トルクカーブを表現する「スロープ値」が正しく設定されていないと、正しいパワーの絶対値を得ることができない。相対値でもいいじゃんって人もいるけど、それじゃパワーメーターの意味がないのでは・・・と思う。

ゼロオフセットは温度や湿度(?)で変動するらしく、ライド毎に調整してあげる必要がある。Powertapは自動的にトルクのない状態を検出して勝手に調整してくれて、CinQoではクランクを何回か逆回転することで調整されるみたい。SRMは不明だけど、それなりに賢い方策が用意されているものと予想。

厄介なのがスロープ値。
Powertapは構造的にこの値が狂うことは稀らしいのだけど、クランク部分で計測するSRMやCinQoの場合、チェーンリングを交換したりチェーンリングが緩んだりすることでこの値が狂ってしまうことがあるみたい。

SRMは本家のコンピューターを使うことでスロープ値を調整できるみたいなのだけど、CinQoは基本的にユーザーの手元でやることを想定していない。メーカー側が出荷時に調整してくれているので、「チェーンリング変えなければ大丈夫でしょ、ガハハハハ」という考え方もあるようだけど、ちょっと心配。

http://forum.slowtwitch.com/gforum.cgi?post=2122869;search_string=cinqo;

この問題については↑のスレッドやウェブの他の場所でも議論されていて、Jimさん@QUARQも「スロープ値を調整する治具を販売店に出すことも検討する」みたいなことを書いてる。

http://forum.slowtwitch.com/gforum.cgi?post=2753337;search_string=;#2753337

と思いきや、こっちのスレッドでは「時間の経過とともにスロープ値がズレるのは製造側の問題。CinQoのスロープ値は安定しているからギア板を変えない限り、リキャリブレーションは必要ない。そして、正しいリキャリブレーションを行うにはそれなりの技術力を要するので、ユーザーの手元でやらせるとさらにエラーが大きくなる可能性が高いのでやらせたくない。」とも書いてる。

http://forum.slowtwitch.com/Slowtwitch_Forums_C1/Triathlon_Forum_F1/SRM_vs_Quarq_P2750967-2

さらに新しい情報によると、新しいquarqdとAnt+のUSBスティックを使えばスロープ値のキャリブレーションもできるらしい。もう少し時間が経てばノウハウが確立されそうなので、キャリブレーション問題でビビる心配はなくなったと考えてよさそう。

http://opensource.quarq.us/quarqd/

となると、手元でバッテリー交換・キャリブレーションができて、ホイール縛りにもならなくて、(比較的)安いCinQoってアリなんでね?

・・・というのが自分がたどり着いた結論。

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5月にオーダーをかけた際にはキャリブレーション周りや信頼性に不安を残した状態だったのだけど、新情報を漁るごとにCinQoで大丈夫そうな雰囲気が濃厚になってきたところだったので、今回うまく調達できなかったのは少々残念ではある。

と同時に、せっかく一旦キャンセルになってる&どうしても今必要なものってわけでもないので、もう少し機材構成について考えてみる予定。

まぁ、ちょっと待ったくらいで革新的なパワーメーターが登場する可能性は低いわけですが・・・。

パワーメーター狂想曲」への7件のフィードバック

  1. はじめましてです。
    近くに早い人がいるんだなーと思いつつ拝見させて頂いていました。
    さてパワーメーターですが、私もPTから入ったのですがクランク型が欲しくなりS975を導入しました。
    やっぱり練習でも好きなホイールを履けるのは良いですね。
    キャリブレーションの件、大変参考になりました。
    あっGCを使わさせて頂いています。
    ありがとうございます。

  2. 個人的にはMetriGear Vector だったんですが、諸般の事情でpt。

    SRMって、アレですね、ガチンコ度が違う。ゲルマン魂感じる。

    CinQo。手の届く範囲に近い。だけど発音微妙(どーだっていい)。

  3. > Ogaさん
    はじめまして。
    やはり、クランク型はよいですよねー。
    キャリブレーション話は適当にネットで調べただけの耳学問なので、話半分くらいにしておいていただけると助かりますです・・・。

    > ba-mosさん
    MetriGear Vectorは製品化で苦労してるっぽいですね。
    どこか大手がサクッと買収して・・・みたいなシナリオが一番可能性高そうですが、どうなりますことやら。PolarとLOOKが組んで来年あたりに何か出すという話もありますが、これはこれで微妙な予感・・・。

  4. > 新しいquarqdとAnt+のUSBスティックを使えばスロープ値のキャリブレーションもできるらしい。

    なんか呼ばれた気がするw

    機材は手元にあるんですが、まだ試していないんですよね。
    折を見て試してみます(でブログに上げます)。

  5. > keyさん
    期待してますw

    現状書かれてる方法だとノンエンジニアには敷居が高そうなので、一般的には「スロープ値が狂ったらQUARQに送れ」ってことになるのかなーとは思っています。

  6. > keyさん
    おー、ナイス投稿、素晴らしい!
    日本初(?)のCinqoユーザーのさらなる偉大なる一歩、ですね。人柱万歳。

    自分もCinqoユーザーだったらキャリブレーションは自前でやる気がしますが、積極的にやりたくなる作業ではなさそうですね。誰かがボタンをぽちぽち押せばできるようなフロントエンドを書けば一般化しそうですが、普及台数&利用者層を考えるとそういうことにもならなさそうですし。うーむ。

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