次のレベル / ハンター・アレン

パワートレーニング教の教祖の文章がなかなかよかったので、翻訳してみた。

原題は”The Next Level”。
原文はこちらで、全ての自転車競技選手に対してFTP向上を目指す必要性を訴えつつ、その方法を説いている。やたらと濃い文章なので、へたにトレーニング本をだらだら読むよりこれを実践した方がよいかもしれませんね。

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「次のレベル」とは何だろう?それは何を意味していて、どうやってそこへ辿り着けばよいのだろう?みな、いつも「次のレベル」について話していて、「次のレベル」に辿り着けると考えているように見える。具体的に彼らは何について話しているのだろう?エンデュランス能力を高めたい?FTP値を向上させたい?マッチ箱の中のマッチの数を増やしたい?それとも、それら全て!?まぁ、もちろん最後のやつだよね。「先生、私はそれが全部が欲しいんです、お願いします」…でも、実際のところ、全部をいっぺんに手に入れることなんてできるんだろうか。ひとつひとつの分野を向上させていって、最終的に「全部」を向上させたほうがよいのだろうか。要するに、問題は、自転車を今よりも速く走らせることができるかどうか、ということだ。そして「どうやって」速く自転車で走るようになるか、ということこそが挑戦なのだ。

「向上したい」と断固たる決意を持ったのならば、どの領域で向上することがあなたにとって大切なのかを考える必要がでてくる。もしあなたが「次のレベル」に行きたいということであれば、それはつまりフィットネスレベル全域での向上を目指すことに他ならない。そしてフィットネスレベル全域ということを考えた場合、最初に超えるべき壁はFTPとなる。もしジョージ・ヒンカピーが突然「次のレベル」に行ったとして、FTPが420Wから450Wに向上したとすれば、私はそれを「次のレベル」と呼ぶだろう。これは彼のスプリント力の向上を意味するのだろうか?それとも短い急坂を駆け上がる能力の向上?恐らく、違う。でも、今や彼は向上したFTPによってスプリントをする必要なく単独で逃げ切る能力を得たはずだ。これは、昨年私がコーチをしたマスターズカテゴリーの選手のケースに当てはまる。彼は短距離スプリントやVO2maxの向上に重きを置いたトレーニングをしていて、マスターズカテゴリーの中ではそれなりに競争力を持つことに成功していたものの、レースを支配することには成功していなかった。そこで私が用意した答えは「次のレベル」にいくことだ。私は彼にFTPの向上だけに集中するように教えた。彼はトレーニング量を15-20%増やし(仕事や家庭のあるアスリートには難しいことだが)、FTPやFTPより少し下の領域でのインターバルを大量に(彼が望んでないほどに)こなした。集中したトレーニングを3ヶ月続けた結果、前年度のシーズンに比べてFTPを30W向上することができた。この30Wの違いによって、彼はスプリントや短い坂を恐れる必要がなくなって、1人で悠々と逃げ切ることができるようになったのだった。

では、あたなはどうやってそこに辿り着けるだろうか?どのようなトレーニングをこなせば、「次のレベル」に辿り着けるような急激な向上を期待できるのだろう?はじめにフォーカスすべきことはあなたのFTPを向上することだ。なぜなら、FTPこそが競技レベルを決める支配的なファクターだからで、例えばカテゴリー4レースの平均速度は集団内のライダーの平均FTPから計算できるものとして、そのW/kgはカテゴリー3レーサーのものよりも低いとしよう。もしあなたがカテゴリー4レーサーで、カテゴリー3レースで走りたいと思っているのであれば、あなたのFTPは少なくともカテゴリー3レースの中間値あたりにあるべきだ。そして、もし新しいレベルに辿り着くことができたのであれば、あなたはそのエンジンに磨きをかけて、より強度の高いインターバル等をこなしてレース目的に応じたトレーニングを行うことができる。「次のレベル」に行くための鍵となる四つの項目を挙げてみよう。

1- トレーニング量を15-20%増やそう。多くのレーサーがこれを難しく感じているようだ。みな時間が足りなくて、毎日2時間以上乗るのは難しいと考えている。もしあなたが「次のレベル」にいくことを望むのであれば、遅かれ早かれこの問題を解決する必要は出てくる。一日に複数のライドを行うのは解決にならない。月に2回、できれば3回のロングライドを行うことを推奨する。少なくとも5-6時間以上、ライドの最後に強度を上げられるのが理想で、家に辿り着く頃には筋肉が悲鳴をあげているような状態が望ましい。なんといってもこれが一番の練習で、あなたがプロであろうとアマチュアであろうと、マイレージ/トレーニング時間を稼ぐことでトータルのトレーニングボリュームとストレスを増やし、心肺能力と筋肉にこういった負荷を慣れさせる練習なくして次のレベルに到達することは出来ない。エンデュランス能力を向上する意味で、これらのロングライドに代わる練習は存在しない。多くのレーサーがいくらインターバルやグループライドをやっても強くなれないという泣き言を言うが、彼らは5時間以上のライドを行うことがないのだ。

2- FTPに近い領域での長いインターバルを行うように心がけよう。最低でも40-60分、FTPの91-105%の強度の練習を週に3回続けることができれば向上できる可能性は高い。この強度で3週間のトレーニングをこなしたあとは、FTP近辺での練習を60-90分に伸ばし、週に1回のロングライドに90分のFTP近辺の強度のセッションを含めるようにしよう。まずはFTPの105%で10分3セットのセッションを連続して行うことで、インターバルを挟む形で100%FTPでの30分3セットのセッションと同等のトレーニングを行うことを目指そう。もしFTPが維持できなくなったら、FTPの88-93%のスイートスポットゾーンでトレーニングを続ける。88%が維持できればそれなりのトレーニングストレスを期待できるので、FTPの向上を見込むことができるはずだ。

3- セッションの間には休みを入れよう。それぞれのトレーニング日の間にはレスト日を設定する。本気でFTPの向上を望んでいるのであれば、それぞれのワークアウトごとにレスト日が必要になる。もし毎日トレーニングして目標する数値に届いていないのであれば、トレーニングの効果は薄まってしまう。パワーメーターの素晴らしいところは、インターバルで目指すべき出力が分かるので、正しい強度で練習できることだ。また、同じように素晴らしいところは、あなたの調子が悪くて目指すべきワットが出せてないことが分かることだ。FTP強度での練習をしようとして目標とする出力が出せていないのであれば、一旦エンデュランスペースに戻してから改めて挑戦すればよいだろう。もしそれでも駄目なのであれば、家に帰って次の日出直せばよい。

4- 質と量が鍵だ。インターバルで目的とする強度に到達することも重要だが、成長するために必要な量をこなすことも同じように重要となる。もし物理的にFTPの領域のパワーを出せないのであれば、必要なストレスを与えていないことになるわけで、多くの場合量よりも質を追求したほうがよい。例えば、FTP強度で10分x4回(10分レスト)のセッションを行った場合、全部で40分のFTP強度での練習ができたことになる。もし20分x2回のセッションを行おうとして、1回目はFTPで2回目がFTPの85%しか出せていなかったとしたら、前者のほうが効果的と言える。あくまでも質に注目して、もし疲れてきたのであれば、インターバルを短くする(ただし10分以上)ことで目標とする出力を維持しよう。強くなってくれば、FTP強度でより長く、沢山のインターバルをこなすことができるようになり、最終的には30分x3や60分x1をやれるようになるだろう。インターバルの最終セットでは、「これが一番大切なんだ」と自分に言い聞かせるようにしよう。クライミングリピートのラスト1本、インターバルのラスト1本、ビルド期間の最終週、ここでの頑張りが違いを生み出す。ワークアウトをより効果的な者にするためには、ワークアウトの最後に頑張る必要がある。インターバル自体と、それらをいかにして行うかが重要だ。もしはじめから強度を上げ過ぎてしまった場合、インターバルを通してFTP強度を維持することができないかもしれない。もしイージーに入り過ぎてしまった場合、せっかくのトレーニングを台無しにしている可能性がある。正しいペーシングは正しいトレーニング(特にFTP強度の練習)を行う上でとても重要だ。私がおすすめするのは、スプリントはしないまでも素早く速度を乗せて、FTPから10-15Wほど高い数値に落ち着かせることだ。最後の数分までこのペースを維持し、最後の最後は10-20%上げるつもりで追い込む。これを行うことで、ダウンロードしたデータのはじめとおわりに「二つのピーク」を見つけることができるだろう。このペーシング戦略は、タイムトライアルやFTP近辺でのインターバルに有効だ。

「次のレベル」とは、インターバルを適当に繰り返したり、毎週80km多く走ったり、特定のエネルギーシステムを使うことに注力することではない。それは、これらの三つの要素を合理的で斬進的なやり方で組み合わせることで、あなたの乳酸性閾値(LT)システムに負荷をかけ、しっかり休んだ後により高いFTPを得ることだ。これは時間のかかるプロセスなので、効果を得るためには少なくとも3ヶ月の集中したトレーニング期間を設けたほうがよい。きっと、疲れている日もあるだろうし、トレーニングの効果が信じられない日もあるだろう。余裕のある日にしか練習しなかったとしたらまともなトレーニングはできない。こういった日にも強い信念をもってトレーニングを続けることが大切だ。「次のレベル」はそこにあって、賢くて集中した計画を練って実行することで、あなたはそこに到達することができるのだ。

次のレベル / ハンター・アレン」への6件のフィードバック

  1. こんにちは、はじめまして、

    非常に有意義な情報をありがとうございます。
    頑張ってチャレンジしてみます。

  2. ピンバック: Tweets that mention 次のレベル / ハンター・アレン ? 鈍行・中目黒の自転車メモ 2 -- Topsy.com

  3. いい仕事してますね?
    ほんとありがとうございます。
    今後とも期待してます。

  4. > まるまさん
    はじめまして。
    読んでいるとモチベーションが上がってくる文章だと思います。
    あくまでAllenさんが辿り着いたトレーニング理論なので、100%真に受けるのは危険で、個人個人にあわせた実行可能性も考える必要があるとは思います。・・・が、たぶん、ある程度強くなってからFTPを30W上げるにはここに書かれているようなトレーニングが必要になるんだと思います。

    > pmaさん
    参考になったようでよかったです。
    来年もどこかのレースでバトりましょう!

  5. 翻訳ありがとうございます!と?っても勉強になりました。
    やまけいさんは翻訳だけで実行はしないでいいですからね(笑
    あ、もしかして本当に知られたくない情報は翻訳してなかったりして(^^;

  6. > KOHさん
    うっす!
    来年に向けて集中してLTワークを増やす時期を増やしてみようかなーと考えています。+10Wはいけそうな気がするんですけど、+20Wいけたら拍手喝采?

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