BLOOD SWEAT + GEARS

ドーピングが蔓延しているプロサイクリングの世界で「クリーンに走る」ことを宣言して2007年冬に結成されたスリップストリームチーム(現Garmin-Cervelo)が、2008年のシーズンを闘う様子を取材したドキュメンタリー作品。

チームリーダーはCOFIDIS時代にドーピングが発覚して2年間のサスペンションを食らったデイヴィッド・ミラー。それにクリスティアン・ヴァンデヴェルデやマニュス・バクステッドといった選手がチームに加わり、シーズン序盤はツール・ド・フランスの出場枠を得るためにチームが様々なレースで活躍する様子を描く。スリップストリームはトラック競技のチームも持っていたようで、ロードとトラックを両方やっていたマイク・フリードマンがパリ・ルーベやオリンピックの出場権を巡って闘う様子も描かれていて、なかなか面白い。

自身もロード選手としてのキャリアを持ち、「クリーンに走る」チームコンセプトの提唱者であるジョナサン・ヴォータース監督が映画全体で取り上げられているのだけど、アメリカ人らしくフランクに思ってることをビシバシ言う彼の言動がこの映画のひとつの見せ場になってる。OVERCOMINGのビャルネ・リース監督とは対照的で(?)、キャラの立ってる彼にかかると(ちょうど勝利を逃した選手に向かって)「アベレージなプロ選手にとってツールで勝てるかも知れないチャンスは一度あるか分からないんだ」とか、「あの選手は今年はまだろくに登れてないからねー」とか、そのままズバリの発言がポンポン飛び出す。

無事ツールの出場権を獲得したチームは、メンバーを選んでフランスへと乗り込む。出場選手を選考するチーム内マネージメントのランチミーティングの様子が普通に撮影されていたり、「ごめん、今回は君を選べなかったんだ」と電話する様子などなど、生々しいチーム内の事情が描かれているあたりも興味深い。ツールを走っていく中でミラーとヴァンデヴェルデの関係が逆転してしまったり、あれやこれやと様々な出来事が起きるのだけど、当然ながらこれらもレースの展開にあわせてよく描かれている。

CHASING LEGENDSのように映像的に迫力のある格好よいドキュメンタリー作品というよりは、泥臭くてみっちりと中身の詰まった作品という印象でなかなか楽しめた。デイヴィッド・ミラーの自伝が出ていたはずなので、今度機会があったら読んでみよう・・・。