The Potential Inside

2011年になってからリリースされた映画”The Potential Inside“。
自転車が出てくる映画としてamazon.comの評価が異様に高かったので見てみた。

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一旦は引退を決めたベテランMTBレーサーが主人公。私生活で大切なものを失った彼が、再びモチベーションを取り戻して次世代の才能溢れるレーサーに教えを授けていき・・・という物語。映画全体を通してやたらキリスト教的家族主義な表現・描写が多いなーと思ったら、製作した独立系スタジオのRed Croud Productionsはクリスチャン映画を作るところらしい。

物語のプロットにはほとんどひねりがなくて、幸福な家族->不幸が起きる->自暴自棄になる->再生する->神様万歳というキリスト教的物語のお約束を踏襲してる。全ての人には(神様から)「潜在能力」が与えられていて、進むべき道を見失ってしまうことがあっても(神様の助けで)前に進んでいくことができるんだよ、というのが物語のメッセージ。

話がキリスト教くさい(その割にはかなり楽しめる&ちゃんとした映画になっていると思う)のは置いといて、脚本・監督・主演のScotty CurleeはMTBレースに20年近く携わった人らしく、自転車ネタのレベルが尋常じゃなく高いのがこの映画の最大の特徴。

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「VO2Maxというのは、アスリートのエンデュランス能力を表す数値なんだ。だから、数値が高ければ高いほどそのアスリートには潜在能力があるってことになる。」とかいってVO2Maxを測定するシーンが普通にでてきたり、「これから君はSRMパワーメーターをつけてトレーニングする。君が踏み下ろしたペダルへの出力は正確な数値として記録されるから、ライド毎にデータをダウンロードして、僕と一緒にレビューすることになる」なんていうセリフが普通にでてくる。こんな映画は他にはないよなぁ(笑)。

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極めつけは主人公たちがVO2Maxテストを行う「研究所」がCharlottesville/Virginiaにある”Hunter Allen Institute”という設定で、Hunter Allen本人がさらっと登場したり、アメリカのMTBレースのナショナルチャンピオンに2回なってるJeremiah Bishopもちょい役で出てきたり・・・と、自転車乗り視点から見てマニアックな見どころがたくさん。

Hunter Allen本人がこの映画に関して書いた記事はこちら。製作初期から自転車関連のシーンのテクニカル・コンサルタントとしてお願いされていたみたい。映画中に出てくるフェラーリF360はHunter Allenの持ち物。ただしエンドロールにはキャストとしてか載ってない。

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当然ながらMTBレースのショットはクオリティーが高くって、自転車選手体型のScotty Curleeがトレイルをガンガンこなしていくシーンはとても見応えがある。全ての撮影はバージニア州でおこなわれたようで、レースシーンはThunder Ridgeとかいう実在するコースが使われた模様。レース中にパンクした際に、ポケットに入れてたチューブとボンベで物凄くスムーズにパンクを修理するシーンなんかもあったりして面白い。

主人公のチームメイトとしてMTBレースにデビューする期待の新人が32歳のオヤジで、もともとスキー選手だったのが怪我をして自転車レースに転向して・・・という設定なのだけど、たかだか半年程度のトレーニングでエリートカテゴリーで活躍してしまうのはちょっと無理があるのでは・・・と思いつつ、全体的に楽しんで観賞することができた。

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Scotty Curleeへのインタビューを読むと、もともとのタイトルはそのまんま”VO2Max”だったみたい。制作の最終段階に入ってから一般的ではない単語はやめましょうってことになって、より直接的な”The Potential Inside”(潜在能力)に変更したとのこと。

劇場公開はなしでDVDでの販売のみ。ここ数年はこういう形態で世に出てくる映画が多いですな。amazon.comから買おうとしたら日本への発送を拒否されたので、amazon.comのマーケットプレイスからゲット(結果、なぜか送料が安く済んだ)。リージョンフリーだけど字幕はなし。興味のある知り合いは貸し出しますんで申告されたし。