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トレーニングに関するあれこれ アーカイブ

2009年11月26日

トレーニングについて考える(1):エネルギーソース

自転車競技のトレーニングについて考えてみるシリーズその1。

別名「自分の理解を広めるためにまとめていたメモを整理して、記事に仕立て上げてみよう」シリーズ。素人っぽさ丸出しの記事なので、読みにくくてまとまっていませんが、そのあたりはご容赦ください。また、間違いなどあればご指摘いただけると嬉しいです。

・・・ってなわけで、第一回のお題は"エネルギーソース"。

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人が運動するためには筋肉の収縮が必要。
筋肉を伸縮するための直接的な動力源はATP(Adenosine Tri-Phosphate(アデノシン三リン酸))という物質で、これは筋繊維の中で炭水化物等のエネルギー源から変換される。ATPはクリーンなエネルギーソースで、筋繊維のための収縮運動と熱として放出される(比率は50:50くらい)。それぞれの筋繊維には、フルパワーでもがいた時の2-5秒分の「すぐ使えるエネルギー」としてATPが蓄えられている。

ATPへの変換に酸素を必要としないPCr(Phosphocreatine(クレアチンリン酸))も筋繊維内で生成され、フルパワーでもがいた時の約10秒分がそれぞれの筋繊維に蓄えられている。

以上、二つのエネルギーソースが「すぐに使えるエネルギー」。これだけだとごく短時間の運動しかできないので、持続的な運動を行うためには以下のエネルギーソースに頼る必要がある。

- 炭水化物
比較的使いやすくて、そこそこ長時間使えるのが特徴。
エネルギーソースとしての炭水化物は単純なブドウ糖で、グリコーゲンという形で体内(筋繊維と肝臓)に蓄えられている。ブドウ糖のATPへの変換は筋繊維内で行われ、酸素を使う好気的代謝(低負荷、長時間向け)と、酸素を使わない嫌気的代謝(高負荷、短時間向け)の2パターンに分かれる。

好気的代謝はエネルギー効率がよく、約50%がブドウ糖からATPにエネルギーソースとして変換される(残りの50%は熱として放出される。ATP->筋収縮の効率とあわせて、全体的な効率は25%)のに対し、嫌気的代謝はエネルギー効率が非常に悪く、ブドウ糖->ATPの変換効率が7%程度で、食べカスのエネルギーを乳酸として放出する。

体内には1,500-2,000kcal程度のグリコーゲンが貯蔵されていて、これらを利用することで60-90分程度の比較的高い強度の運動を持続することができる。

- 脂肪
一番使いにくいけど、一番たくさん蓄えられているのが特徴。
ある程度貯蔵用と割り切って蓄えられているので、重量あたりのエネルギー量は炭水化物の倍。一般的に、50,000-200,000kcal程度あるらしいので、まさに桁違いのエネルギソースということができる。

ただし、エネルギーソースとして利用するためには、炭水化物と比べてより多くの酸素を必要とするため、高強度の運動では炭水化物が優先的に使われてしまう。

・・・と、以上が人の体に蓄えられているエネルギソース。

休んでるとき、歩いてるとき、走ってるとき、ダッシュした時・・・と、様々な状況に対応できるよう、それぞれのシチュエーションに最適化されたエネルギソースと燃え方が準備されていることがよく分かりますね。

エネルギーの利用効率に関して、大きな転換点といえるのが炭水化物の好気的代謝と嫌気的代謝。前者が約25%の効率で熱しか出さずに燃えるシステムなのに対し、後者がエネルギー効率たったの3.5%でしかも燃えカスまで出してしまう・・・。これって、冷静に考えるとものすごく大きな違いです。

エンデュランススポーツでは、いかにエネルギー効率のよい身体を作り上げることが大事かということが伺い知れるのではないかと思います。

次回は、筋肉についてまとめる予定。

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なお、メモをまとめるにあたり、以下の資料を参考にしています。
興味のある人は、どうぞ手にとってみてくださいませ(アマゾンアソシエイトを使ってます)。

- Base Building for Cyclists: A New Foundation for Endurance and Perfomance
- Bicycling Science
- エネルギー代謝を活かしたスポーツトレーニング

2009年12月03日

トレーニングについて考える(2):筋繊維の種類と働き

自転車競技のトレーニングについて考えてみるシリーズその2。

「筋繊維の種類と働き」

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人の筋繊維は、大きく分けて

- Type I (slow-twitch(遅筋))
- Type II (fast-twitch(速筋))

に大別される。
Type Iが長時間の運動に向いているのに対し、Type IIは短時間で強い力を出すのに向いている。Type IとType IIの比率は人それぞれで異なり、遺伝的要因が強いとされる。

Type Iの繊維は、ATPの生成に酸素を必要とするのが特徴。炭水化物あるいは脂肪を燃料とし、疲労耐性は強いものの収縮速度が遅く、大きな力を出すのには不向き。SO(Slow Oxidative)繊維と呼ばれる。

Type IIの繊維は、Type IIaとType IIbに別れる。
Type IIaはFOG(Fast Oxidative Gylcolytic)繊維と呼ばれ、炭水化物を酸素あり(好気的代謝)・なし(嫌気的代謝)両方のモードで燃やすことができて、Type Iの繊維に比べると収縮速度が速いのが特徴。
Type IIbはFG(Fast Gylcolytic)繊維と呼ばれ、炭水化物を酸素なしモード(嫌気的代謝)でバカスカ燃やすことで、速くて強い収縮ができるのが特徴。

FG繊維はエンデュランストレーニングによってFOG繊維に転換することが可能とされるものの、FG繊維はグリコーゲンを他の繊維よりも多く蓄えることができるので、そのメリットは捨てることになる(爆発的なパワーを持続できる時間は減る)。

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筋繊維は「縮む」方向にしか力を発揮することができない。例えば、太ももには表(大腿伸筋群)と裏(大腿屈筋群)に筋肉があって、相互の働きによってはじめて膝の屈伸動作が可能になる。

筋肉の働きには、筋繊維が短くなりながら力を発揮するコンセントリック収縮と、筋繊維が伸びながら力を発揮するエキセントリック収縮、さらに筋繊維が動きを伴わずに収縮するアイソメトリック収縮がある。

筋肉を動かすのは脳内の刺激ではあるものの、どの種類の筋肉繊維を使うか意識的にコントロールすることはできない。「弱い運動強度では小さなSO繊維が動員され、運動強度が上がって収縮力が強まるにつれて、より大きなFOG、FG繊維が順次動員される」としたのがHennemanの「サイズの原理」。

一般的に、筋トレは

1. 筋繊維の肥大
2. 筋繊維の太さは変えずに、断面積あたりの筋力を増大させる=神経系の向上

の二種類に分かれる。
それぞれの目的に応じて適切な負荷のかけ方&インターバルの取り方があるようなのだけど(このへんは専門書を読んでくださいプリーズ)、神経系の向上を行うためにはエキセントリック収縮が有効とされる。これはなぜかというと、エキセントリック収縮では「サイズの原理」が適用されず、速筋からはじめに使われるので、大きな負荷をかけることなく効果的に速筋を鍛えることができる、ということ。

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まとめると、筋肉にもいろいろと種類があって、燃料の燃え方と同じようにそれぞれの運動強度にあわせた形で最適化されたシステムを持っている、ということらしいです。

ロードレースのようなエンデュランススポーツでは、SO/FOG繊維の働きを最適化させることで、好気的代謝の領域でどこまで強いパワーを出せるかが大事になってくると同時に、FG繊維を利用した嫌気的代謝の領域でのアタックやスプリントにも対応しなければいけない、ということなのでしょう。

「スプリンターは生まれてくるもの」とはよく言われることですが、これは遅筋と速筋の割合が生まれたときから決まっていることに由来するようです。スプリンタータイプはトレーニングによってFG繊維をFOG繊維に転換することでTTにも強くなれますが、ノン・スプリンタータイプの場合はFG/FOG繊維が限られているので、スプリント能力は鍛えても限界がある、と。

次回は、LTについてまとめる予定。

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この記事をまとめるにあたり、以下の資料を参考にしました。

- Bicycling Science
- 目でみる動きの解剖学
- Dr.マサコのスポーツ医学講座

2010年01月18日

The Drugs Don't Work

音楽じゃなくて自転車の話。

昨年末あたりから、トレーニング後orトレーニングした日の夜にはプロテインを飲むようにしている。

個人的にこの手のものはあんまり信じてない&頼りにしていなかったのだけど、2010年度の目標を設定した際に「もっと筋肉をつけねばいかん」という結論に達したので、効果があるかないか判断するという意味で飲み続けている。

筋肉がついたかどうかはよく分からないのだけど、飲んだ時の効果として筋肉痛が明らかに軽減されることは実感としてある。ついつい強度を上げたトレーニングをしてしまい、翌日のトレーニングまでに回復できずに短い/軽いメニューで済ます・・・みたいなパターンが多い(お馬鹿)ので、少しでも翌日に筋肉痛が残らない効果がある物質(ま、しっかり寝るのが一番ですが)はとても貴重だと思っている。

飲んでいるのは、amazonでも飲みやすいと評判のザバスのココア味。実際にプロテインが入ってる量でコストパフォーマンスを考えるとベストなチョイスではないようなのだけど、牛乳に溶かしたときの飲みやすさ(普通に美味しい)が気に入ったので、お試しで飲んでた500gのものがなくなる前に2.5kgのものを追加購入。
これでしばらくはプロテインに困ることはなさそう。

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さらに、水に溶かして補給用ドリンクを作るためのマルトデキストリンも大人買いしてあって、外練やロングライド、レースで愛用している。詳しいことはよく分かってないのだけど、エネルギー源になる糖分が水に溶けやすい粉状になっているもので、カーボショッツとかあの手のものを買うよりも圧倒的にコストパフォーマンスに優れた補給食兼ドリンクを準備できる・・・っていうことらしい。

筋肉増強のためにプロテインを摂取する際には、一定量のカロリーを同時に摂取することで吸収がよくなるらしいので、プロテインと一緒に手っ取り早くカロリーを摂るためにも使われたりするみたいなのだけど、そっちの用途ではあんまり使っていない。

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あと(まだあるのか)、ロードレーサー1年生の頃に膝を痛めて以来、お世話になっているのがグルコサミン&コンドロイチン。結局膝痛には半年近く悩まされてしまい、スポーツドクターに通ってリハビリをするようになってようやく脱却できたのだけど、グルコサミン&コンドロイチンもリハビリと同じようなタイミングで導入したので「鰯の頭も」的な気分で今でも飲み続けている。

まー、飲んでる時でも飲んでない(飲み忘れてる)時でもサドルの高さをいじったり疲れた状態で峠を走り回ったりすると膝に違和感が出ることは分かっているので、そろそろやめてもいいかな。

2010年02月03日

Golden Cheetahの新機能

イケイケドンドンなノリで開発が進んでいるGolden Cheetah
近日中に1.3がリリースされる予定で、すでに1.4向けの話がちょこちょこ。

中でも目玉機能として注目されているのが"Aerolab"。

これは「パワーメーターの出力値を使って自転車が走るのを邪魔する抵抗を計算してしまいましょう」という試み。うまくいけばソフトウェアで風洞テストが実現できてしまうポテンシャルを秘めていて、現在鋭意開発中とのこと。

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自転車が前に進むのを邪魔する大きな抵抗は空気と重力の二つ。
重力による抵抗は身体と財布のダイエットで頑張るものとして、空気抵抗はポジションの変化によって低減させることが可能。空気抵抗はCdA(=Cd(coefficient of Drag(大気抵抗係数))xA(frontal Area(前面投影面積)))に大きく依存するので、前面投影面積をできる限り少なく抑えるのが王道的アプローチ。

それ以外の小さな抵抗としてはタイヤの転がり抵抗とドライブトレイン内でのパワーロスがあり、転がり抵抗はタイヤの種類・空気圧と路面状態に依存し(Crr(路面抵抗係数)として表現される)、ドライブトレイン内でのパワーロスはコンポーネントの性能&状態に依存する。

Aerolabの動作としては、出力値、速度、重量等の情報をもとに計算された仮想的な高度変化をCrrとCdA(空気抵抗係数(=前面投影面積x大気抵抗係数))等のパラメータを調整していくことで実際の高度変化に合致させ、CrrとCdAを割り出す仕組み。

逆に言うと、解析対象とする走行では同じ路面状況&同じポジションをキープする必要があるので、実際にCrrとCdAを求めるために使うときはコンディションを整えて走ったデータを準備する必要がある。風の影響で計算が狂ったりしないのかが謎ですが、そのあたりはきちんと考えられているのでしょう。近いうちにドライブトレイン内でのパワーロスも変更可能なパラメータとして導入される予定とのこと。

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CrrやCdAは、すでにエクセルシートを使ったり数式を解いたりすることで計算する方法が提案されているみたいだけど、一般のサイクリストがシステマチックにこれらの数値を取り出せる・・・という意味で画期的な試みであるといえそうです。

お試し版のWindowsビルドはすでにここからダウンロード可能。

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あと、個人的に気に入っているのが走行データの3D表示機能。
パッと見てどういうトレーニングしたのが直観的に分かるの素晴らしい。
これは1.3に入るはず。

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gc_training_menu_gen.png

あとは・・・QTの勉強がてらEdge 705のAdvaned Workoutを作成・エディットできる機能を手元で作成中。TCXを吐きだす部分がまだだけど、ある程度動くようになったらパッチを送りつけてみようかな。

実を言うとトレーニングメニュー作成ツールをGoldenCheetahに載せる必要性はそこまでないんだけど、Critical Power(FTP)などの数値を参照しながらトレーニングメニューを作成できたら便利かなーと考えた。

こうなってくると、限定的な表現しかできないEdge 705のトレーニングメニューに縛られることなしに、汎用的なトレーニングメニュービューワー兼エディター(?)にしてしまったほうがよいのかも?

まー、暇な時にでもちょこちょこ書き足していこう。

2010年02月08日

扇風機

ローラー台で負荷を上げた時の冷却用に工業用扇風機を導入。

LSDからTempoにかけてのペースであれば1時間+走っても小さい扇風機だけで間に合っていたのだけど、LT近辺まで上げると一気に発熱量が増えて辛くなることが分かったので、orange_BEACHさんのブログ記事に載ってたデカいやつをゲット。

配置は自転車の斜め後方。
風力が弱・中・強の三段階で切り替えられるのだけど、未だに「弱」より強くしようと思ったことがないくらい圧倒的な風量で大満足。夏場になったきたら配置を考え直した方がよさそうだけど、春に向けてのローラー台トレーニング快適化計画はこれで完了かな。

2010年02月18日

トレーニングレベル

Coggan先生の"Training and Racing with..."の抜粋記事を発見

せっかくなので、(知ってる人には何を今さらだけど)トレーニングレベルについてメモ。
自分の場合、FTPが260W、LTHRが173bpmなので、トレーニングレベルは以下のような感じになる。FTP/LTHRは、それぞれ60minTTを行った際の出力値/心拍数。

ゾーン 心拍数(bpm) パワー(W)
Zone 1 アクティブリカバリー 118 or less 143 or less
Zone 2 エンデュランス 119-144 144-195
Zone 3 テンポ 145-163 196-237
Zone 4 LT 164-182 237-273
Zone 5 最大有酸素域 183 or more 274-312
Zone 6 無酸素域 N/A 313 or more
Zone 7 Neuromuscular Power N/A N/A

自分の理解している範囲で各ゾーンを解説してみると・・・

- L1はいわゆる「回復走」の領域。レース後のクールダウン等で利用。

- L2はLSD走と(ほぼ)同じ領域。長距離を走っても負担がかからない負荷なので、この領域で走りこむことで心肺・代謝系の能力向上が期待できる。特にロードレースでは、ここを鍛えておくことで回復力のアップが期待できる。ただし、ここばっかり鍛えても「速く」はなれない。

- L3はいわゆる「テンポ走」の領域。平地の単独走やグループライド、それに長距離レースで集団の中にいる時やなんかに多用する。"The Bible"曰く"Meat and potatoes for cyclist"。

- L4は「メディオ走」に該当(厳密にはちょっと違うけど)する領域。20-60min程度のTT強度と同じなので、ヒルクライムで強くなるためにはここを重点的に鍛える必要がある。ヒルクライムに限らずロードレースでもこの領域で出せるパワーが鍵になることが多いので、積極的に鍛える価値がある。

- L5は(大まかに言って)「ソリア走」の領域。5min TTとほぼ同じ強度。この領域で走り続けるのはかなり辛い。積極的に前を引いたり、短めの登りをこなすときに使うので、ロードレースでは勝敗を分ける重要な領域。ただし、ヒルクライムではほとんど使わないので、ヒルクライムオンリーの人がL5以上を鍛える必要性は薄い(はず)。

- L6は1分前後のダッシュのための領域。登り基調のゴールでペースをガツンと上げる時やなんかに使う・・・はず。L6以上の領域を心拍数で管理することは不可能。

- L7はいわゆる「フルもがき」の領域。スプリントやアタックで利用。この強度で連続的に走ることは不可能なので、トレーニングをパワーメーターで管理することは不可能。ただし、最大値を計測することはできる。

ってな感じでしょうか。

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BaseフェイズではL2メインで心肺・代謝能力を向上させ、Buildフェーズでレースニーズに対応した強度を鍛えて行く・・・というのが"BBC"や"The Bible"に書かれているセオリー。

ロードレースでのペースアップや短めの登りに対応するためにはL5を積極的に鍛える必要があるし、ヒルクライムで上を目指すには体重をできる限り低くしながらFTPの向上を計る必要がある。

FTPを向上するために最も効果的なのがSST(Sweet Spot Training)と呼ばれるもので、これはFTPの85-90%の強度でトレーニングすることで、時間あたりの効果が最も得られるとされるトレーニング方法。

Coggan先生のゾーン分けはパワーメーターが基準にはなってはいるものの、LT未満の領域に関してはCardiac Drift(脱水・熱の影響で、一定負荷で走り続けていると心拍数がじわじわ上がってしまう)の効果がそこまで大きくないので、心拍数をベースにしたトレーニングでも十分に使うことができるように思う。

そういう意味でいくと、パワーメーターは「強くなる過程を管理」するツールとしては使えるけれど、「強くなる」ために絶対的に必要かって言われると「そうでもないんじゃない」と思ってしまう自分もいたりして・・・。

2010年03月04日

ゆけゆけゴールデンチーター

"もうPoor man's WKO+なんて呼ばせない!!"・・・ってことなのかどうなのか知りませんが(誰もそんなことは言ってない)、オープンソースのトレーニングログ管理ソフトのGoldenCheetahは今日も元気に進化中。

ここ数週間の間に、

- Google Mapsによるライドログの地図表示
- 過去何日間かのライド情報を時系列で比べられるMetrics表示
- WKO+にあったStacked View(横長のグラフが何段も重なった表示)

が追加されて、大変ナイスな感じになってます。
もともとの開発のモチベーションが「MacでもWKO+が使いたい」だったみたいなので、WKO+と同等の機能が追加されていくのはそれとして、エクストラの機能が意欲的な開発者によってどんどん追加されていくのが素晴らしいです。

前に紹介したAerolabも開発の本流に取り込まれたので、手元だと普通に利用可能・・・なのだけど、手元で試した限りだと、標高グラフをうまく一致させることができなくてちょっぴりもてあまし中。さらなるrefineに期待ですかね。

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拙作のTraining Menu Generatorも、しばらく塩漬けになっていたことを思い出して今更パッチを送りつけてみた。Edge 705専用の限定的な機能なので、もう少し一般的に使えるように進化させたいところだけど、具体的にどこから手をつければいいか悩み中。

intel Mac/Snow Leopard向けの最新バイナリーをここに置いておくので、Macな人は試してみていただければと。

2010年03月17日

サイクリストの性能諸元

どこかのリンクで偶然見つけた Cycling Time のトレーニング記事にパワーウェイトレシオの解説が載ってたので、便乗して解説。

「パワーウェイトレシオ」ってのは、5秒、1分、5分、20分という決まった時間内で出せる出力値を体重で割った数値で、サイクリストの「性能諸元」とでも言うべきもの。要するにスペックですね。「インテル入ってる?」

上の記事に載ってるパワーウェイトレシオを評価してくれる表は"Training and Racing with..."からの抜粋で、この表に自分の数値を当てはめていくことで、自分が自転車乗りとしてどういう特性を持っているかを客観的な数値から判断することができる。

世界チャンプ、世界トップクラス、プロ選手、コンチネンタルチームあたりのカテゴリーは分かりやすいからよいとして、カテゴリー1、カテゴリー2・・・ってのはアメリカの自転車協会のカテゴリー分けで、ここに解説がある。過去1年間に稼いだポイントによるカテゴリー分けで、カテゴリー1,2であればアマチュアの中ではそこそこってことみたい(着に絡めるレベル)。

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で、某T岡さんがブログに書いてる記録を参考にして、アマチュアで国内最強クラスのレーサーの数値を取り出してみると、こんな感じになる(元ネタはこれとかこれとかこれとか)。

- 20min 326W(FTP 310W) = 5.4W/kg -> プロ
- 5min 375W = 6.2W/kg -> プロ
- 1min 620W = 10.3W/kg -> プロ
- 5sec 950W = 15.7W/kg -> カテ2

(体重は09年の沖縄前の60.4kgとさせていただきました)

やはり、トップクラスのレーサーは凄いとしか言いようがないですね・・・。
基礎能力としてのFTPがプロ並みで、さらに1min/5minの値もプロ並ってあたりにロードレーサーとして戦う能力の高さが表れているのでしょう。

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比べるのもおこがましい話だけど、ここ最近の自分のデータを寄せ集めてみると、

- 20min 274W = 4.64W/kg -> カテ1
- 5min 320W = 5.4W/kg -> カテ1
- 1min 492W = 8.3W/kg -> カテ2
- 5sec 1024W = 17.4W/kg -> カテ1

ってな感じ(体重59kgで計算)。

1minの数値がいまいちなのは前から分かっていただのだけど、ロードレースで戦っていくためにはこの領域をもっと鍛える必要がある。20min/5minはあともう少しでコンチネンタルチームクラスになれそうなので、まずは290W/330Wあたりを目標にTTを実施してみることにしよう。

スプリントはゴール前での動きが下手くそ過ぎて勝てる気がしないので、5secは現状維持できればいいかな・・・。

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そういえば、"Training and Racing with..."は4月に第二版が出るらしい。

このへんを読む限りだと、トライアスリート向けの記事が増えて、機材やソフトやワークアウトメニューに関する記事をブラッシュアップしたみたい。既に持ってる人がわざわざ買うことはなさそうだけど、パワーメーター利用者でまだ持ってない人は新版にしたほうがよさそうです。

2010年03月23日

Mid Base 期間終了

(もはやほとんど意味をなしていない)トレーニング計画の、4週間x2に渡るMid Base期間が終了。

1st block 41:05/1070km

week1 6:30/165km
week2 14:00/375km
week3 9:45/260km
week4 10:50/270km

2nd block 42:50/1105km

week1 7:20/205km
week2 13:30/340km
week3 12:30/330km
week4 9:30/230km

ってな感じで、10hour/weekのノルマはブロック単位で無事達成。
まー時間/距離を乗ればいいってわけじゃないけど、どれくらいの時間をトレーニングに費やせているかっていうのは、トレーニング量のひとつの指標にはなるんじゃないかと思う。

Mid Baseに続くのはLate Base期間。
"Base Building for Cyclists"には、この期間に行うべきトレーニングメニューがいくつか紹介されているのだけど、いずれのメニューもちょっぴりタフなものになっているので、そろそろ本格的に負荷をあげてよい、ということになるみたい。まだBase期間なのでLSD走にもある程度時間を割きつつ、これらのメニューをこなしていくことにしよう。

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年末頃から埼玉クリテ、もてぎ、ウィンターロード、JCRC・・・と、月2本のペースでレース参加しているせいか、クライム能力を伸ばす練習ができてない気がする。平日練の短い時間で強度を上げて、週末のロングライドでマイレージを稼ぐ・・・というのが王道的なトレーニングサイクルだけど、週末にレースが入ると週末のロングライド分を平日に割り振る必要が出てくるので、強度を上げたトレーニング量が必然的に少なくなってしまう・・・。

4月もレースが続くので、トレーニングとレースの両立はしばらく頭痛の種になりそう。
今はまだまだ「強くなる」フェイズだと思っているので、レースによっては100%のコンディションで望むことは諦めるくらいの割り切りがあってもよいかな。

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そういえば、流行に遅れて(笑)twitterはじめてみました。流行り始めた頃にアカウント作った記憶があるのですが、なんとなく放置してたら最近になってあちこちから補足されたので今更ながら・・・。ハイテクなモバイルがジェットを持ってないので著しくリアルタイム性に欠けますが、自転車以外のネタについても適当に呟いてみる予定。

そんなわけで、twitter繋がりでakirasekさん撮影の写真をいただきました。修善寺の登りの山頂手前で先頭集団から抜け出したところ。この後のダンシングのフォームが超絶かっこわるいので、そっちはあえて自粛。

埼玉クリテ第3戦の写真byK川さん。
一つ目のシケインを抜けるところだけど、やっぱりハンドルが近くて小さいフレームに乗ってる印象を受ける。

先週の川越の写真byジロさん。
下ハンなのにブラケット握ってる時のような上半身の角度。
リラックスしてるシーンだと思うのだけど、やっぱり近いな・・・。

結論:VX-Eliteはポジションが近すぎる。っていうか、フレームがワンサイズ小さい。BB-ブラケットの距離はExtreme-Powerより2cm以上近いので、ダンシングが窮屈なわけだよ・・・。

120mmのステムも既に調達済みなのだけど、そうすると今度は前輪のハブよりハンドル軸が前に出てしまって操縦性が犠牲になりそうなので手詰まり状態。やっぱりこれからはExtreme-Powerをガシガシ使おう。レース機材はレースで使ってこそかっこいい。

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Sクラスで序盤から独走して勝利したN谷店長。
凄い筋肉・・・。

2010年04月22日

Base期間終了

"Base Building for Cyclist"を参考にして12月からはじめたトレーニング計画のうち、5ヶ月近い(5x4週間=20週間)長いベース期間がようやく終了。

過去4週間の"Late Base"期間の走行時間・距離は、

1: 19:45/490km
2: 6:15/170km
3: 14:00/360km
4: 6:40/150km

46:40/1,170km

ってな感じで、ノルマの10h/weekは無事達成。
もう少しマイレージを稼ぎたかったけど、10h/weekのノルマで満足してしまっている自分がいたので要反省。

もはや「トレーニング本に忠実」とは間違ってもいえない状態だけど、「ベース期間中のメインのトレーニングはあくまで低強度」ということだけは意識してた。んで、今週からは「Advanced期間」なので、目標とするレースに応じたトレーニングを心置きなくできる。

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ってなわけで、今年のレース目標を改めて整理。

昨シーズンはレース参加も少なかったし(5レースのみ)、「ヒルクライムで入賞する」という明確な目標があったから分かりやすかった。4月の草津までにある程度身体が絞れていて、6月のMt.富士ヒルクライムにスムーズにピークをもっていくことができた代わりに、そのあとはずっと低調のまま・・・という感じ。ピークを早めに持ってこようとしすぎると、無理がたたってもう一回上げるのが難しくなってしまうように感じた。

今年は6月のMt.富士ヒルクライムに一つ目のピークが来るようにこれから調子をあげていきたい。まだ今は高い負荷に身体が順応し切れていない感じがするので、これからしばらくは山登りを意識したトレーニングに専念。

それから先、6月、7月・・・という流れでは、暑くなって来て乗らなくなるのが怖いので、少なくとも月1くらいでレースを入れてある程度乗れる状態をキープ。出られるJCRCのレースは基本的に出て、経験を積みつつ上に上がれるように努力。そうこうしているうちに8月の乗鞍があって、去年悔しい思いをした9月の秩父宮杯があって・・・という感じで10月一杯くらいまで走れる身体を維持できればよいかな。

11月のおきなわにもチャレンジしたいけど、どのクラスでどのくらい走れるかはもう少しレースで走ってみてからじゃないとイメージできないので保留。10月に毎年楽しみにしているテニス大会があるので、おきなわに出る場合はこれを諦めなきゃいけないのが痛いんだよなー。もし出る場合は10月に初の2,000kmオーバーを狙うくらいの気持ちで走り込んでこう。

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今シーズン参加してきた11レースは、

12/20 埼玉クリテ#1 8位(未登録者・中級)

1/4 もてぎサイクルマラソン 9位(男子A)
1/10 埼玉クリテ#2 落車DNF(未登録者・中級)
1/31 ウィンターロード#1 5位(Cクラス)

2/7 埼玉クリテ#3 12位(未登録者・中級)
2/28 ウィンターロード#2 11位(Cクラス)

3/14 JCRC#1 川越 8位(X2クラス)
3/21 JCRC#2 日本CSC 1位(Eクラス)

4/4 チャレンジロード 19位(B4)
4/18 ツール・ド・八ヶ岳 8位(男子B)

ってな感じ。
2レース/月はちょっと出過ぎだけど、ロードレースでは経験を積むことも大切なことだと思っているので、これからも無理がこない範囲で参加していこうと思う。

3月中頃に59kgを切るところまで落ちてた体重は、その後に寒かったり飲む機会があったりで順調に落ちてくれず、59kg-60kgのレンジをフラフラ。「4月のヒルクライムはベストコンディションで望めない」と分かったので、無理して落とすよりもトレーニング優先と割り切ることにした。

2010年06月10日

トレーニングの負荷を科学する

WKO+にある Performance Management Chart っていまひとつ見方が分かっていなかったのだけど、よい記事を見つけたのでメモ。

Managing Your Training Stress Balance

TSS、TSB、CTL、ATLといった用語に関する解説はTarmacさんとこで一通り紹介されてるのでそちらをどうぞ。

肝心な部分を訳してみると・・・

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WKO+のパフォーマンスマネージメントチャートは、謎に包まれた運動生理学を数値化することで、短期のトレーニング計画を作る上での有力な情報源となります。特に効果的な利用方法として、トレーニングによるストレス・バランスをコントロールすることにより、あなたのピークパフォーマンスを狙ったレースにもってくることができます。ストレス・バランスを管理するためには、以下の項目を満たすように意識しましょう。

1. TSBがレース日に小さな正の値(+5前後)であること。多くの選手はTSBが小さな正の値の時によいパフォーマンスを発揮する。

2. CTLがレース日の2-3週間前に最大値に達していること。CTLはあなたのフィットネスレベルを表すので、レースに向けて最大化するのが望ましいのと同時に、レース日に疲れを残さないように然るべきテーパリングをするための日数も必要になる。

3. ピークに向けたトレーニングをはじめてから、CTLが2週間連続で減少しないように意識すること。CTLの減少はフィットネスレベルの低下を示す。休養のためにCTLが微減することは大きな問題ではないが、2週間連続でCTLが落ちるようであれば、それは休養状態を越えてサボっている状態であると考えられる。

4. CTLが5TSS/week を越えて増加しないこと。5TSS/week を越えるトレーニング量の増加はパフォーマンスの低下、または怪我に繋がることが多い。

5. 10日に1回以上のペースでTSBが-20未満に落ちないこと。-20未満のTSBは、トレーニングでのパフォーマンス低下に繋がる状態を表すので、エンデュランスアスリートは頻繁にその状態に陥ることは避けねばならない。

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・・・ってな感じ。

以上の議論はパワーメーターとTraining Peaks WKO+の利用を前提にしたものだけど、Mac/UNIX向けのWKO+クローンであるところのGolden CheetahでもTSSと同等の値(Bike Score)を利用してほぼ同じことができる。

TSS -> Bike Score
ATL -> STS (Long Term Stress)
CTL -> LTS (Long Term Stress)
TSB -> SB (Stress Balance)

と読みかえればOK。
で、自分のトレーニング履歴を改めてみてみると

- 12月から2010年向けのトレーニングを開始
- 年末年始〜2月いっぱいまではパワーメーターのついてないTIME号でもトレーニングしてたので、Bike Scoreが算出されてないログが多い(のでTSBが正の値にいきがち)
- ゴールデンウィークの1週間前にまとまったレストウィークを取った影響でTSBが大きく正の値に振れた
- それからまたトレーニングし続けて、Mt.富士HCの直前になってから少しレストを入れてTSBを微かに正の値に持ってくることができた(レース日のTSBは8.9)

・・・といったあたりが分かる。

もちろん、数値で表現されること以外にも日常生活のあれこれで体への負担は大きく変動するので、TSBやCTLの変動だけを頼りにトレーニング計画を練るのは危険。それでも、ある程度正しいFTP値が設定されていて、継続的にトレーニングを続けているのであれば、Performance Management Chartはなかなか有益な情報を提供してくれるのではないか・・・、という感触はつかむことができた。

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詳しく勉強したい人はTraining and Racing with a Power Meterを読むとよいです。

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