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Bicycling Science / David Gordon Wilson

自転車という乗り物をアカデミカル&マニアックに調べ尽くした本。
込み入ったところは斜め読みしつつ、2か月くらいかけて一通り読破。

自転車の動力たるヒトの筋肉がどう動くかからはじまり、パフォーマンスの変化、自転車の歴史、空気/回転抵抗、ステアリングの理論、構造的強度や駆動系の動作効率、さらには膨大な量の人力の乗り物に関する情報などなど、自転車という乗り物にに関して科学的に解説できることが網羅し尽くされた内容になっている。

様々な実験データは"Bicycling Science"の著者が実際に行ったものではなく、膨大な量の参考文献から拾ってきたものによって構成されているため、断定的な書き方がされていないのが特徴。

たとえば、チェーンドライブの動作効率に関する記述はこんなノリ。

現行の自転車の動力伝達装置における伝達ロスに関する包括的な知識および、もしそこに問題があるとするならば、それをいかに修正できるのか、ということは我々にとって大きな関心ごとである。残念なことに、この領域についてはまだ意見の一致が見られてはいない。ゆえに、ここでは伝達ロスに関して報告されているデータを注意深く紹介しよう。

Ron Sheperd(1990)によれば、ディレーラーを含むチェーンによる動力伝達装置における伝達効率は、通常99%以上であるとされる。対照的に、Spicer et al(1990)の計測では、新品状態のディレーラーシステムであっても伝達効率が88%まで落ちることが報告されている。(中略)彼らの計測からは、以下の観測が導きだされる。

1. 動力伝達装置の効率は、リアスプロケットが小さくなるにつれて減少する
2. トルクの伝達量(チェーンテンション)が減るにつれて、効率は低下する
3. 最大の伝達効率は、比較的高い出力(175W)と低いペダル回転(65rpm)と最低のギア(21T程度の最大直径のリアスプロケット)によって得られ、効率は98%を超える
4. チェーンラインが真っすぐでないために生じる伝達ロスは、無視できる量である
5. 注油状態は伝達効率にほとんど影響を与えない

**

はじめから通して読まなくても、「自転車が走る」「自転車で走る」ことについてありとあらゆることが載っているので、辞書的な使い方も可能。自分の記事も含めて、ウェブに載っている情報には不正確でソースも不明なものも多いので、アカデミカルな視点から自転車関係のネタを漁る入口として使える。

自転車の種類もロードバイクとかマウンテンバイクとかいったものに限定されていないので、例えば「レースで速く走る」ための知識としては不必要なものがほとんど。それでも興味深い話がてんこ盛りなので、自転車好きで科学嫌いじゃなくて、英語読むのを苦にしない人であれば存分に楽しめる本だと思う。


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コメント (2)

KOH:

すごく勉強になりそうな本ですね!
「チェーンラインが真っ直ぐでない時のロスは無視できる量」
というのは驚きです。ということは、アウターローを使わずに
インナーに落とすのは効率を落としてしまうということですよね?
自分は今までアウターローはできるだけ使わずにインナーに
落としてました。。。英語の本を読めると世界が広がりますね~。

yama-kei:

> KOHさん
うーむ。
一般論としては勉強になるのですが、比較的新しい機材に関しても同じ議論が
適用できるのかといった点に関しては少々疑問が残るかも。

チェーンに関しては、「インナーは踏みごたえがない」とか言われるように、
ギア板が大きい組み合わせの方が効率がよいみたいですが、実際のところは
なんとも・・・。
まー、話の種に知っておくと面白いネタが満載なのは間違いないです。

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2010年02月05日 21:51に投稿されたエントリーのページです。

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