RaphaのLong Sleeve Jerseyの背面ポケットの裏地に、パンターニの記事が載っていた。
1998年7月28日
マルコ・パンターニは、レ ドゥー ザルプでの勝利に向かってアタックしていた。ぞっとするような天気で、後輪から跳ね上がった雨は彼の太股を流れる。ハンドルのドロップ部分にしがみつくような、彼独自のアグレッシブな登りのスタイルで、パンターニはウルリッヒやその他のライバル達を引き離していた。
パンターニが着ているのは、ジャージと手首まで下ろしたアームウォーマーだけ。彼は口を開き、空気を求めて喘ぐ。それでも、彼の表情には笑顔が見える。彼はアタックを楽しんでいるのだ。まさに、これこそ、彼がこの世にある証なのだから。魂、カリスマ、華々しさ、なんだっていい。これがレースの面白さだ。これ故にこそ、我々は海賊を愛し、彼に心を奪われるのだ。
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1998年はパンターニがジロとツールのダブルクラウンを達成した年だ。
7月28日は、悪天候下の中をアタックしたパンターニが単独で逃げて、マイヨ・ジョーヌを着ていたウルリッヒが寒さにやられて失速した日。この日マイヨ・ジョーヌを奪取したパンターニは、ウルリッヒの追い上げをかわしてパリでの優勝を飾る。
この日の気温は12度。パンターニがアタックしたのはゴールまで56kmを残したガリビエ峠の手前11kmの地点。このあまりにも無謀なアタックには誰もついていくことができず、レ ドゥー ザルプの頂上ゴールに飛び込んだパンターニは、第二グループで追走した2位のボビー・ジュリックにも6分近い差を付けた。