12/09-12/11 金峰山・瑞牆山
It's just a miso soup
瑞牆山と金峰山にソロで行って来た。単独でどのくらいまでやれるかが知りたかったものの、はじめからヤバいところに行くのは怖かったので、「それなりに面白そうで、比較的安全な山」という条件で金峰山にした。
山と渓谷社の「日本雪山登山ルート集」をペラペラとめくっていて、「アルペンムードたっぷり」なんていう素敵な言葉に惹かれたのと、前から行きたかった瑞牆山についでに寄れそうだったのが強く背中を押したのだった・・・。
1日目に増富温泉から入山し、富士見平小屋にテントを張って瑞牆山往復。2日目に金峰山を往復してそのまま下山、という計画にした。川端下側から入山することも考えたのだけれど、2日目の時間がなさそうだったのであえてこういう形にした。
12/9
21時新宿発のあずさに乗り、韮崎で降りる。
駅舎の中で寝ようと思っていたのだけれど、ゆったり眠れそうなスペースがなかったので駅前の広場にある芝生の上にテントを張って眠ることにする。
12/10
昨日は無精をしてグラウンドシートをひかなかった上に、エアーマットも使わず、さらにはプラブーツのインナーも履かなかったためにやたらと冷えて、1時間半ごとくらいに目が覚めた。
6:25に起床。朝ご飯のおにぎりをほおばり、テントを撤収。
7:40の増富温泉行きのバスに乗り、「山に行くの?寒いよ〜」なんて運転手さんに脅かされながらも8:45に増富温泉を出発。4日に大量に雪が降ったらしく、この辺りの道路にもまだいくらか雪が残っている。
プラブーツでアスファルト道を延々と歩くのは拷問に等しいので丁度いいや・・・と快調なペースで歩いていくと、9:45頃金山荘の手前あたりで前方に瑞牆山を確認。異様な岩の形に「これからあそこに行くんだ」という精神的高揚を体中で感じる。金山荘のあたりからは瑞牆山、金峰山がよく見えた。
ザック一杯の荷物と単調なアスファルト道に飽き、少しペースが落ちてきたあたりで瑞牆山荘に到着。山行計画書を提出し、今日の宿泊地である富士見平を目指して登り始める。
途中、祠のあるところで少し迷うものの、祠の横から道が続いていることに気づき、そこからしばらく登ると富士見平小屋に着く。時間に余裕があるのでテントを設営し、少し休憩。
あの重い荷物とは明日の午後までおさらばだ・・・と思うと身も心も軽くなる。ウェストバックに必要最低限なものを入れ、念のためピッケルを装備して出発。
暗い樹林帯を抜け、水の枯れた天鳥川を越えるとあとは単調な登り。岩が露出した雪道なので、足の裏感覚のないプラブーツには厄介な道のりで、邪魔なピッケルを持ってきたことを後悔しながら登っていく。前方にそびえ立つ大きな岩を迂回するようにしてさらに高度を稼いでいくと、瑞牆山の北面にある分岐にぶつかり、ここから2,3分歩くと山頂に出る。
山頂は風が強くて寒いし、充電を忘れたデジカメは寒さでストライキを起こして動かないし・・・ということで、あまりのんびりせずに山頂を後にする。
下りは登りと同じくらいに単調で、荷物運びで疲れてフラフラした足と、ゆるんだ気持ちのコンビネーションで何回か危うく転びそうになった。もう少し展望があればよいのだけれど、基本的沢道なので仕方がない・・・。
水は瑞牆山荘でもらって来ようと思っていたものの、「いざとなれば雪を溶かせばいいや」と考え、もらって来なかった。凍結が心配されていた富士見平小屋の水場を確認しに行くと、運良く水がある。3Lほど汲んでテントに持ち帰り、早速お茶を沸かしてのんびりしてから夕食にする。
7,8人のパーティーが2つのテントに別れて幕営するほかは、誰もこの場所に泊まる人はいないようだ。食事を済ますと他にやることもないので、明るいうちからシュラフに潜り込んで仮眠する。19:00 に一旦起きて、隣のテントが宴会で盛り上がっている音をぼんやりと聞きながら眠る努力を繰り返し、宴会の終わった21:00頃から3:00頃まで質の高い睡眠をとることができた。
忘れずにエアーマットを敷き、プラブーツのインナーを履いたのが功を奏したらしい。
12/11
3:00頃に目が覚めてしまったので、本を読んだり地図を眺めたりしながら時間を過ごす。
5:00を過ぎたのでもういいだろう、とシュラフを飛び出して、プラブーツを履き雨具を着込んで外に出る。トイレを済ませて空を見上げると満点の星空だ。
ストーブに火をつけてお茶を沸かし、朝食を摂る。食事は昨日と同じくアルファ米の炊き込みご飯(?)とみそ汁。アルファ米のパックにお湯を注ぎ、火力を調整してお湯を保温状態にしつつみそ汁を作るタイミングを計る。ストップウォッチが18分を指す頃を見計らって火力を強め、インスタントみそ汁を入れたカップにお湯を注ぐ。体の芯から温かい飲み物を欲しているのがとてもよく分かる。
ただの「みそ汁」(それもインスタント)なのに、どうしてこうも美味しく感じるのだろう?寒くて厳しい環境だと、人の体はとてもダイレクトに反応する。小学生の時に行ったネパールのポカラで、悪天のために飛ばない飛行機を待っている間に飲んだ温かい紅茶がとびっきり美味しいものに感じられたことを思い出す。
・・・と、そんな感慨にふけっていると出発が遅れそうになったので、わらわらと装備をまとめてザックに放り込み、テントの撤収にかかる。
昨日少し強めに打ち込んでしまったペグが1本だけどうしても抜けない。
そんなこんなでしょうもないことに時間を費やしてしまったおかげで、結局予定時間を15分もオーバーして出発。隣のテント組は、テントを撤収せずに10分ほど前に出発してしまった。
大日岩を目指す道のりは、はじめの急登を過ぎるとあとは平坦かつ若干下り気味な道のりで、急登を朝一番の快調なペースで登り、途中で前のパーティーを追い抜き、そのペースを維持したまま大日岩の手前に到着。
「大日岩のトラヴァースが危ない」と聞いていたので、「では!」とアイゼンを装着する。・・・が、アイゼンを履くのは5月の富士山以来。早速慣れないアイゼンをひっかけて手を打ったりして、ドジな自分に悪態をつきながら大日岩のトラヴァースを越える。
20cm程度積もった雪は柔らかく、雪の下に隠れた岩をアイゼンがひっかいて悲痛な音を出す。幾度となくアイゼンを外そう外そう、と悩むものの、結局「いい練習になるし、どうせ金峰山の頂上周辺で使うだろう」と思ったので、そのまま急になった登りで高度を稼ぐ。
2,300mを越えた辺りから少しずつトレースが薄くなり始め、樹林帯を抜ける辺りから寒くなりそうだったので、雨具の上を着て防寒対策を万端にして金峰山を目指す。
稜線上の道は、これまでの静かな樹林帯とはうってかわって恐ろしい突風に深い雪、そして大きめな岩に悩ませられる厄介な道のりである。2003年の5月に行った西穂高は、天候に恵まれた上に雪がなかったのでアイゼンなしで険しい岩塊を通過していったわけだけれど、今回はそれよりも悪い環境であったために、難易度としてはこちらのほうが上であるように感じられた。もちろん「一発アウト」がない分だけこちらのほうが安全であることは確かではあるが。
うっすらと残ったトレースは稜線の北側を通っていて、ところどころに見える岩のマーキングを目印に進むので迷うことはない。ただ、途中から北側の稜線の下に広がる樹林が途切れ、猛烈な風が吹き付けてくるのには閉口した。
風と雪と岩にもういい加減うんざりした頃、ようやく五丈石の直下に到着。ここには少しだけ木が茂っていて風をしのぐことができる。ザックを降ろしてポケットから凍ったスニッカーズを取り出し、ほおばりながら目と鼻の先の金峰山山頂を往復した。
展望はほとんどなく、富士山が申し訳なさそうに雲の間から頂上を覗かせているくらいだ。
こんな寒いところにいるのは美容・健康上よろしくないので、早速ザックを拾って暖かな樹林帯を目指す。とにかく頭の中はこの寒さから逃げ出すことで一杯で、樹林帯に着くと早速雨具の上を脱いでアイゼンを外し、延々と続く樹林帯の下りを開始。
下山中の頭にあるのは、とにかく「早く増富温泉に辿り着いてお風呂に入りたい」の一心で、退屈な下り道を駆けるようにして降りていった。
富士見平小屋で朝置いていった荷物をザックにまとめ、どうしても抜けなかったペグが力ずくで抜けたことに満足して瑞牆山荘へ下る。この道のりは北側の斜面であることや、比較的人が多く通るせいか、ところどころ道が氷結していて恐ろしい。こういうところでこそアイゼンは使うべきだよなぁ、と思う。瑞牆山荘からは、思い出すのも嫌になりそうなほどに退屈なアスファルト道を出来る限り飛ばして歩き、増富温泉に到着。限りなく少ない時間を利用して温泉に入り、バスから見える南アルプスや八ヶ岳の姿を楽しみながら韮崎まで行き、あずさに乗って帰京した。
単独行でのテント泊の大変さや、雪山登山の楽しさを満喫できる充実した山行であった。



